放送作家は一番長く続いているバイト
――大学在学中から放送作家の仕事をされていたとのことですが、きっかけ教えてください。
三木 放送作家募集の求人を見た友達が、「俺一人で行くのは嫌だから付き合ってくれ」と。それで、僕が受かってそいつが落ちるっていうオーディションを受けたアイドルの様なパターンでした。
――「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬」「笑っていいとも!」など、たくさんの名バラエティに関わられています。
三木 辞めるきっかけがなかっただけで、いまだに「一番長く続いているバイト」という感覚です。だいたい僕が行くときは番組が終わる頃なんですよ。番組がだんだん上手くいかなくなると、「新しい血を入れよう」とか言って、変な作家がいないかという話が出るので。
――今回、素材撮りのために監督がローションで粘液を自作されたということですが、放送作家時代に現場で培われたものですか?
三木 いやそんなことはないです。昔、演劇で血みどろ芝居みたいなものをやったことがあって。パラノイア百貨店という劇団のスタッフが血糊の作り方を教えてくれたんです。まぁいろんな経験からきています。
――映像業界を目指す方にアドバイスをお願いします。
三木 テレビも舞台も映画もあまり変わっていない気がします。自分自身の志向みたいなものが見極められれば、それを表現するのに一番いいのはテレビなのか、映画なのかというように、手段はあとから形になっていくような気がします。元の部分があやふやだと、次に自分が進んでいく方向が見えにくいんじゃないかな。まず、自分がやりたいと思う気持ちをどれだけ強く持てるかだと思います。
――学生やティーン世代に、この映画の見どころを教えてください。
三木 今の日本映画からすると、あり得ない作品だと思います。映画の持っている自由さを併せて観てもらえればと思います。こんなにいろいろ自由なことができるんだと。東映・松竹という大きな映画会社が今回コミットしてくれていますが、物語についても、役者についても、全然あれこれ言われなかったんです。珍しく懐の深い映画業界を見たなと思いました。今後も日本映画が持っている自由さが広がったらいいですね。
――映画のオチにはみなさん驚かれるのではないでしょうか。
三木 映画ってもともと何でもいい訳じゃないですか。でも映画の持っていた自由さみたいなことが、どうしても商業的な要素で封じ込められてしまうことが多い。それをこれだけの規模でこういう自由なことができたということを皆さんに味わってもらって、そんな映画を面白がる気持ちをみなさんが持ってくれれば嬉しいです。
Information
『大怪獣のあとしまつ』
2月4日(金)より、丸の内TOEI、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
山田涼介 土屋太鳳 濱田岳 眞島秀和 ふせえり 六角精児 矢柴俊博 有薗芳記 SUMIRE 笠兼三 MEGUMI 岩松了 田中要次 銀粉蝶 嶋田久作 笹野高史 菊地凛子 二階堂ふみ 染谷将太 松重豊 オダギリジョー 西田敏行
監督・脚本:三木聡
配給:松竹・東映
©2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会
人類を未曽有の恐怖に陥れた巨大怪獣が、突然の死を遂げた。 緊急事態宣言が解除され、若者も前線から日常へと戻ってくるが、全長380メートルにも及ぶ怪獣の死体は残されたまま。政府は対応に追われることとなる。世界に一つだけの死体は、有害物質を発生させる恐れがあるが、莫大な経済効果を生む観光資源でもある。結局この巨大怪獣「希望」のあとしまつを押しつけられたのは、首相直属の組織である特務隊の帯刀アラタだった。しかし彼には大きな秘密があった。

三木聡
映画監督
1961年8月9日生まれ。神奈川県出身。大学在学中から放送作家としてのキャリアをスタートし、「タモリ倶楽部」「ダウンタウンのごっつええ感じ」「笑う犬」「笑っていいとも!」などの人気番組に携わる。89年から2000年まで、シティボーイズのライブで脚本・演出を務めた。2005年『イン・ザ・プール』で映画監督デビュー。その他の代表作に『亀は意外と速く泳ぐ』『転々』『インスタント沼』「時効警察」など。
Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Ryoko Ozawa