さくら学院の頃よりも二人でいることが多い
――もうすぐ高校を卒業されますが、高校3年間を振り返っていかがですか?
新谷 中学生までは学校と仕事のどちらかに集中しがちだったんですが、東京の高校に通うようになって両立を意識するようになりました。3年間、常に精一杯だったんですが、さくら学院で経験したことがあったからこそ、ステップアップできたのかなと思います。常に動いていることは絶対に意味があると思ったし、将来に繋げるために活動していたので楽しかったです。
日髙 振り返ってみると色鮮やかな3年間だったなと思います。さくら学院で過ごした4年間も、ものすごく色濃かったですし、1人で活動するようになって、学校の雰囲気も変わって、また違う世界が広がりました。高校2年生でコロナ禍になって、一気に世界がグレーになってしまい、全てを失ってしまったという喪失感もありました。でも『麻希のいる世界』に出演が決まってから、エンジンがかかったというか、そこから走り出せるようになったんです。絶対に忘れられない3年間ですね。
――新谷さんはさくら学院の頃から俳優になりたいと仰っていましたが、日髙さんも卒業する前から演技で頑張りたいという気持ちはあったのでしょうか?
日髙 さくら学院にいるときは、とにかく歌を歌うことが大好きだったので、ミュージカルで活動したいと思って卒業しました。歌うことは絶対にやめたくなかったので今回の作品を通して、舞台とはまた違うエネルギーの出し方、歌の歌い方ができて嬉しかったです。同時にもっと映画やドラマなど、映像の仕事もしてみたいなという気持ちが芽生えました。
――新谷さんはコンスタントにドラマと映画に出演して、順調にキャリアを重ねていらっしゃいます。
新谷 少しずつではあるんですが、出させていただいています。ただ自分の中で、「これで本当にいいのか」と感じることもあったんです。その中で、『麻希のいる世界』への出演が決まって主演を演じたことは一つの自信に繋がったし、俳優としての覚悟が決まった気がします。
――さくら学院卒業後、当時のメンバーと会うことはあるんですか?
新谷 地方の子が多いですし、平日は普通に学校があるので、卒業してからは会ってないですね。でも麻鈴だけはよく会っています(笑)。学校のこともプライベートのこともお互い知ってるよね。
――仕事で会うのとはまた違った感じなのでしょうか?
日髙 仕事のときは、ちゃんとしなきゃという感じになるんですけど、プライベートだとへにゃーという感じで(笑)。
新谷 私もそう。ラフな感じです。
――いい意味での安心感があるんですね。
新谷 この間、さくら学院の最後の年に出演していた番組の名場面集を見ていて、意外と当時は麻鈴とあまり近くなかったことに気づきました。
日髙 12人もいたからね。
新谷 私が地方組だったのも大きかったかな。だから卒業してから、こんなに近くにいるのが不思議。
――改めて由希と麻希と同世代であるティーンに向けて、『麻希のいる世界』の見どころをアピールしてください。
新谷 私自身もそうでしたが高校時代って何が正しいのか分からない年齢だと思います。答えが分からないからこそ感情の行き場がなくて、常に怒っているというか、何かに対しての不安・不満がある時期だなと。この映画は、それがすごく表れているし、その象徴だと思います。でも、それでいいんだってことを伝えたくて。その熱量を持っていることが大事だし、何に対してもそういう感情を持っていることが大切。どういう形であってもそれが正解で、いろいろな愛のカタチや感情のカタチなどを表している情熱的な映画です。今の自分を信じてほしいですし、その熱量を忘れずに突き進んでほしいです。
日髙 これは私が演じた麻希を通して伝えたいことですが、ゆづみが言ったように「ありのままでいい」ということ。社会に出て行くとなると、自分をどうしても型にはめなきゃいけなくなってしまう状況はいっぱいあります。でも自分を殺さずに、麻希ほどではなくても時には自由奔放に、自分の色を活かして、もっと気楽に生きていいんだよということを伝えたいです。
新谷 大人の意見は絶対に正しいけど、でもやっぱり全部は理解できない。ずっと私自身、それを精一杯飲み込もうとしていたんですけど、逆にそれはいらないんだということに最近気づきました。それは大人になったら、いつか気づくことだから、今の感情を大事にすることが一番です。私のように惑わされて悩んだりしないで、皆さんは自分を大切にしてあげてください。
Information
『麻希のいる世界』
渋谷ユーロスペース、新宿武蔵野館にて公開中、ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:塩田明彦 製作:志摩俊樹、山口貴義 撮影:中瀬慧
出演:新谷ゆづみ、日髙麻鈴、窪塚愛流、鎌田らい樹、八木優希、大橋律、松浦祐也、青山倫子、井浦新
劇中歌:「排水管」(作詞・作曲:向井秀徳)、「ざーざー雨」(作詞・作曲:向井秀徳)
製作・配給:シマフィルム株式会社
©SHIMAFILMS
重い持病を抱え、ただ“生きていること”だけを求められて生きてきた高校2年生の由希(新谷ゆづみ)は、ある日、海岸で麻希(日髙麻鈴)という同年代の少女と運命的に出会う。男がらみの悪い噂に包まれた麻希は周囲に疎まれ、嫌われていたが、世間のすべてを敵に回しても構わないというその勝気なふるまいは由希にとっての生きるよすがとなり、ふたりはいつしか行動を共にする。ふと口ずさんだ麻希の美しい歌声に、由希はその声で世界を見返すべくバンドの結成を試みる。一方で由希を秘かに慕う軽音部の祐介(窪塚愛流)は、由希を麻希から引き離そうとやっきになるが、結局は彼女たちの音楽作りに荷担する。彼女たちの音楽は果たして世界に響かんとする。しかし由希、麻希、祐介、それぞれの関係、それぞれの想いが交錯し、惹かれて近づくほどに、その関係性は脆く崩れ去る予感を高まらせ──。
新谷ゆづみ
2003年7月20日、和歌山県生まれ。アイドルグループ「さくら学院」の元メンバー。19年3月にさくら学院を卒業後、女優業を中心に活躍。主な出演映画作に『さよならくちびる』(19/塩田明彦監督)、『小説の神様』(20/久保茂昭監督)、『望み』(20/堤幸彦監督)、2022年4月1日公開予定「やがて海へと届く」など。2022年は待機作が多数控えており、今後の活躍が期待されている。
日髙麻鈴
2003年12月1日生まれ。神奈川県出身。2015年に「さくら学院」へ加入し、2019年3月を持って卒業。特技は、英語の歌を歌うこと。得意の歌を活かし、ミュージカルへの出演も果たす。主な出演作は、ショートムービー『アンダー・アワー・マスクス』(20/鶴岡慧子監督)、ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~」(20/白井晃演出)、舞台「里見八犬伝」(19/深作健太演出)、映画『さよならくちびる』(19/塩田明彦監督)、TVドラマ『もしも、イケメンだけの高校があったら』(22/テレビ朝日)などがある。
Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Takahiro Iguchi