コロナ禍は何かを突き詰める絶好のチャンス

――カノエさんはTikTokやTwitterの投稿が度々話題になり、フォロワーからの評価も高いですが、コロナ禍でSNSとの向き合い方に変化はありましたか?

カノエ SNSを始めた頃は、特に歌詞などを付けたりすることもなく、無編集で投稿していたんです。でもコロナ禍の中で、大人から子どもまでインターネットを見ることが多くなって、分かりやすくするために文字を入れようとか、動きや色を付け加えるとか、自分なりに編集してみようという気持ちが強くなって、そういう動画が増えました。

――視聴者層は広がりましたか?

カノエ コメントなどを読むと、若い子や同世代くらいの方が多くなったと感じます。 

――SNSはどのように使い分けているんですか?

カノエ 私のことを知っている人に向けてのアプローチはTwitter。私のことを知らない方に、弾き語りを通じて私がカノエラナですよと表現するのがTikTok。その2つから興味を持ってもらった方に、私がどんな人間で、普段は何を考えて写真を撮っているんだろうと伝えるのがInstagramです。

――アーティスト活動を始める前から発信するのは得意だったのでしょうか?

カノエ 苦手でした。でもライブをやるってなったときに発信は付きもので、お客さんを広げるためには、どういう風にしていったらいいんだろうと考えたんです。当時は私を目当てに見に来るお客さんが2人とか、そういう状態でライブをやっていて。このままだと、どうしても活動が小さいものになってしまうので、私にできることはネットしかないなと思って、動画を上げ始めました。また、ある程度引っかかりがないと、いざメディアに出るようになったとしても、自分や曲のことを詳しくしゃべることができなくなってしまいます。自分というキャラクターを誰かに俯瞰して見てもらって、アーティスト像を作り上げてもらうためにSNSというツールを利用しました。

――音楽面でもコロナ禍を経て変化はあったのでしょうか?

カノエ 2021年9月22日にリリースしたアルバム『昼想夜夢』は、作詞作曲だけではなく、編曲にもチャレンジしました。今までもアレンジャーさんに「こういう風にしてください」と、ある程度のイメージを固めた状態で一緒に編曲をしていたんです。それを全部、自分自身でやるというのは初めての経験でした。

――どうして自分で編曲もやろうと思ったんですか?

カノエ コロナ禍で様々なことが制限されることに対して、何かを突き詰める絶好のチャンスではないかととらえたんです。今まで踏み込んでこなかったキワキワの部分まで行ってみようかなというチャレンジ精神もありましたし、自分を鍛えるためという意味合いもありました。これまでピアノとアコギしか触ったことがなかったんですけど、ライブ活動を約5年間続けてきて、バンドライブもやらせてもらう機会があって。そういうときに、いろんな楽器がどういう役割を担っているのかを、フロントに立って実際に体験して、「ドラムってこういう風に入れると歌と被らないんだ」とか、「ベースラインに沿って歌うと気持ちいい感じになるんだ」とか、たくさんの収穫を得ていました。

――曲作りの段階で、どんなサウンドになるか見えているものなんですか?

カノエ 編曲をするようになって、より見えるようになりました。ギターが鳴っているから歌詞を減らそうとか、そんな状況も考えるようになりました。同時進行で詞もメロも一緒に出てくるタイプなので、そこである程度作りながら、こういう楽器が入るようなパターンにしようとか、なんとなく頭の中でイメージが一緒になって聴こえてくることがあるんです。そういう対応を自分の中で上手くできるようになったのかもしれないです。

――初期のアルバムと比べて、具体的にどんな変化があったのでしょうか?

カノエ もともと私はアコースティックのアルバムを出したというのが最初にあって、『ぼっち。』(2015年)はシンプルなアコースティック、『ぼっち2』(2018年)はアコースティックプラス少しアコギで音を足したバージョン、『ぼっち3』(2020年)はアコギで音を足したプラスいろいろな楽器が入っている状態、と変化していきました。そしてアコースティックにとらわれない楽曲を一から作るというのが今の段階で、その作品ごとに分かりやすい進化をしている気がします。変わらないのは、どんなことに対しても、まずは一人でやってみようというところから始まっていること。