新境地となる最新デジタルシングル「キンギョバチ」

――最新デジタルシングル「キンギョバチ」はアニメ『永遠の831』のオープニングテーマですが、どういう流れで制作をしたのでしょうか?

カノエ まず脚本をいただいたんですが、それ自体が初めての経験で、「脚本ってこういう感じなんだ」という状態から始まりました。めっちゃページ数があるし、めっちゃ設定も細かい!みたいな(笑)。アニメ作品の公開後に、設定資料集が出たりしますけど、そういうものを見ている気分でした。アニメを先に見るのではなくて、文字から見るというのも初めてで、かなり戸惑いました。普段から本を読む方でもないので、1ページ開くたびに「これで私は、この世界に入っていける?」って考えて、すごく時間がかかりました。

――脚本を読んで、どんな印象を受けましたか?

カノエ 主人公やその周りのキャラクターたちがめちゃくちゃリアルで、現代社会に普通にいるみたいな感覚でした。「これは自分のことじゃん!」っていうぐらい、キャラクターが丁寧に描写されていて、めちゃくちゃ主人公のスズシロウ君に共感したので、この子に視点を置いて曲を作りたいなと思いました。

――脚本も手掛けた神山健治監督から要望みたいなものはありましたか?

カノエ テーマのようなものをいくつかいただいたんですが、「できるだけご自身の言葉で、自由に、等身大で、かつ共感を呼ぶ歌詞にしてほしい」と依頼されました。共感という意味では、私が思ったことをそのまま書けばダイレクトに伝わるかなと思いました。直接的な表現プラスちょっと皮肉めいた表現だったり、比喩表現だったりをいっぱい使って、混沌とした世界を描こうと。誰が敵か分からない中で戦わなければいけない主人公の気持ちを、いろんなものを含めて描きました。

――神山作品はご覧になっていましたか?

カノエ 『東のエデン』が大好きです。『永遠の831』も近しいところがあるんですけど、この国をどういう風に、誰が変えていけばいいのかという社会に対しての問題提起というか、そういったメッセージを見た人に訴えかける作品が神山作品には多い印象です。今回いただいた脚本を見たときも、個人個人に解釈を委ねられている部分が大きいなと思いました。

――「キンギョバチ」というタイトルには、どういう思いが込められているのでしょうか。

カノエ 『永遠の831』は夏のお話なんです。永遠に終わらない夏を生きている人々への物語ということで、まず夏というワードを出したいというのがあって。地元の夏祭りで、金魚すくいをやったな、でもあの金魚はどこへ行ったっけ?というように、純粋に私の地元のイメージを持ってきました。「そういえば金魚って忘れ去られているよな」「金魚鉢という狭くて決められた空間の中でゆらゆらとさまよっているよな」「金魚鉢って透明であまり見えていないところが、国とか社会の見えない壁みたいなものに似ているな」とか膨らませていきました。脚本の中にも見えない壁のようなものがたくさん描かれていたので、そういう部分を表現したいなと思って「キンギョバチ」というタイトルにしました。歌詞は直接的な表現をたくさん使ったり、言葉遊びをしたり、いろいろな伏線が散りばめられていて、それが全体を聴くことで回収できるような曲に仕上げました。

――カノエさんの新たな展開を感じさせる曲だなと思いました。

カノエ 自分自身、めちゃくちゃ変わっていきそうだなと思いますし、これからどうなるのかなって楽しみです。アニソンを歌うという夢が叶ったというのもありますけど、その夢をどれだけ続けていけるのかは私自身にかかっているので、第1歩目として「キンギョバチ」を聴いて!という強い気持ちです。

――2022年はどんな1年になりそうでしょうか?

カノエ まずは3カ月連続でデジタルシングルをリリースするので、制作面に関しては今までと変わらず、自分の思っていることを積極的にやっていきます。加えて今回のように、大きな作品があって、それに寄り添う曲作りというパターンもこれからたくさんチャレンジしていきたいです。『ぼっち3』を出して、アコースティックなアプローチはやりきった感があったんですけど、もしかしたら、また『ぼっち4』を出したいと思うかもしれないし、そのときはアコギに立ち戻って、もう一回音楽の大切さを考えるっていうことになるかもしれない。そのときどきに自分がやりたいことを大切にしていたいです。

Information

WOWOW開局30周年記念新作長編アニメ『永遠の831』オープニングテーマ
DIGITAL SINGLE「キンギョバチ」
好評配信中

公式サイト

カノエラナ

シンガーソングライター

1995年12月4日生まれ。佐賀県出身。無類のアニメ好きで多くのアニメ作品から影響を受け、独特な着眼点から生まれる歌詞や世界観にあわせて色とりどりに変化する歌声と歌唱力で同世代を中心とした Z 世代から圧倒的な支持を集めるシンガーソングライター。近年、TikTokで投稿した動画「おーい兄ちゃん」が700万再生、約50万いいねという大反響を呼び、フォロワーも30万人を突破した。

Photographer:Atsushi Furuya,Interviewer:Takahiro Iguchi