苦手なことに挑戦する時、いつも背中を押してくれるのは母
――竹達さんが声優の世界で生きていこうと決めたきっかけ、声優になるためにやったことを教えてください。
竹達 小学4年生ぐらいから声優になりたいと思っていて、中学生から養成所のレッスンに通っていました。埼玉から東京の養成所まで、毎週片道2時間弱、往復で4時間くらいかかったんです。今思うと謎の自信だなと思うんですけど、挫折を知らなかったこともあって「絶対に声優になるんだ!」と思っていました。
――竹達さんは早くから事務所に所属していたそうですね。
竹達 養成所から事務所に入るまでが早かったんです。中学3年生でオーディションに受かって、高校1年生の時に事務所に入らせていただきました。養成所では、中学生までは中学生以下を対象としたクラスにいたのですが、高校生からは大人の方たちと混ざってレッスンをするようになって、本当のスタートはそこからだったと思います。初めて挫折したというか「やっぱり向いてないかも」って思うようになったんです。
――高校生で大人の方たちと一緒にレッスンするのは心細いものがありそうです。
竹達 そうなんです。大人の中に一人だけ高校生がいるというだけでちょっと浮いていて。そこで初めて「あの根拠のない自信は何だったんだ」という気持ちになりました。それもあってか事務所に入ってからデビューまで4年ほどかかっています。デビュー前からゲームのイメージボイスドラマの仕事などは少しずつやらせてもらったりしていましたが、アニメ作品でデビューするまでには時間がかかりました。
――十代で4年という時間は、かなり長く感じますよね。
竹達 20歳までに名前のある役でアニメに出られなかったら辞めようと思っていました。犬を飼っていたこともあって、トリマーなど動物に関わる仕事をしようと、自分の心の中で決めていました。そういった決心もありつつ、日々練習を頑張っていたら19歳でアニメデビューさせてもらえてそこからまた新たなキャリアが始まったという感じです。
――声優の道を諦めずに過ごせたのは、どんな気持ちがあったからですか?
竹達 家族はどちらかというと俳優さんなど、テレビに出る仕事をしてほしいと思っていたようですが、私は「声優になりたい」の一点張りでした。声優というお仕事は、年相応の女の子も、大人も、それに人間じゃない役まで、様々な役を演じられることが魅力的で絶対に声優で頑張りたいと思っていました。
――声優のお仕事が足がかりとなって、ライブやテレビなど活躍の場を増やされています。ご家族も嬉しかったのではないでしょうか。
竹達 私自身はテレビのお仕事は不慣れですし、苦手意識はまだあります。でも家族が自分が出演したアニメやテレビを喜んで見てくれるのは嬉しいです。「バラエティーのオファーをいただいたけど、うまくしゃべれないし、お断りした方がいいかな」と母に相談したら「お母さんは〇〇さんとしゃべっている、あやちを見たいな」と言ってくれて。私が苦手だなと思っていることに対して、いつも背中を押してくれるのは母です。結果として楽しかったり、勉強になったりするので、挑戦して良かったと思うことがたくさんあります。
――声優を目指す読者にメッセージをお願いします。
竹達 何が自分のためになるのか、何が学びになるのかが分からないのが声優です。逆に言えば、どんなこともためになってしまう世界だと思います。だから日々の生活も大事な経験だと思います。朝起きて、ご飯を食べて、友達と遊んで、勉強して、恋愛をして、寝る……。そういう日常生活をちゃんと送れていないと、声優として日常生活を表現できません。日常生活はみんなが当たり前に経験しているものだからこそ、何気ない感情の動きがあります。だから日々の小さな経験を大事にしてもらえたらなと思います。家から学校までの道を歩きながら、どんなこと感じるのか。今日のご飯に好きな食べ物、苦手な食べ物があったら、それを見たときにどう思ったのか。そういう小さな心の機微を覚えておくと、いつかお芝居のためになるのではないかと思います。
Information
劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』
2022年2月25日公開
出演:竹達彩奈 丹生明里(日向坂46) / 鬼頭明里 佐倉綾音 濱田岳 渡辺直美 イッセー尾形 松下洸平/ 山寺宏一
原作:Rayark Inc.「DEEMO」
総監督:藤咲淳一
監督:松下周平
脚本:藤咲淳一・藤沢文翁
キャラクターデザイン:めばち
主題歌制作:梶浦由記 主題歌:Hinano「nocturne」(PONY CANYON) 制作:SIGNAL.MD Production I.G
製作・配給:ポニーキャニオン
©︎Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会
城で独り、ピアノを奏でる謎の存在、Deemo。ある日、記憶を失った少女が、空から舞い降りた……。城の不思議な住人達、ピアノの音色で成長する木、記憶を失った少女、そしてDeemo。彼らが紡ぐ、とても優しく、儚く切ない、愛の物語。 世界中で愛されている音楽ゲーム「DEEMO」劇場版アニメプロジェクトが遂に始動。
