撮影現場では役を概念でとらえていた

――映画『君が落とした青空』は、女子中高生から絶大な支持を集める小説アプリ「野いちご」にて発表され、現在発行部数23万部を記録している櫻いいよさんの同名小説が原作です。板垣さん演じた本山佑人は、映画のオリジナルキャラクターですが、脚本を読んだ印象はいかがでしたか?

板垣 恋愛学園ドラマでありながらSFでもあり、いろいろなギミックがあることにワクワクしました。果たしてタイムリープしている時間が、精神的な世界なのか、それとも現実の世界なのかというところの曖昧さがあって、どうやって演技で楽しもうかなと。あと、恋愛物の作品に出演するといつも思うんですけど、恋愛にもそういう曖昧さってあると思うんです。

――確かに心の中にある恋愛と、実際の恋愛は一致しないところもありますし、その境目は曖昧ですよね。

板垣 生の恋愛とは違った、心の中の恋愛の良さってありますよね。そういう部分と、タイムリープで描かれる精神世界のミックスがすごく楽しそう!と思いました。

――福本莉子さん演じるヒロインの水野実結が何度も「同じ日」を繰り返す中で、少しずつ周囲のリアクションも変化します。同じ日を何度も繰り返す演技は難しかったですか?

板垣 特に難しさはなかったです。基本的に僕は順撮りだったんですが、最初にベースとなる日を撮って、そこから1回目、2回目とタイムリープした日を順番に撮っていきました。事態が動き出すのは、すべて実結が軸なので、それ以外の役者さんは僕も含めて、その日を初めて経験する訳ですから、タイムリープしていることは知らない。なのでライブ感というか、どんな展開がきてもいいように、相手の役者さんがこういうお芝居をするんだったら、自分はこういう感じでというように、柔軟に演じることができました。ただ莉子ちゃんは大変だったんじゃないかなと思います。

――すべての出来事が、実結を起点に動いていきますからね。

板垣 タイムリープしても、毎回、朝学校に行くところから始まります。バタフライ・エフェクト(※ちょっとした出来事が様々な要因を引き出し、それが大きな動きへと繋がっていく可能性があるという考え方)的に、実結がいつもと違う呼吸の仕方や行動をする。自分が変化したことで周りが変わったのか、それとも周りが変化したことで自分が変わったのか、そこは曖昧なんですが、その変化を現場で受け取るのが楽しかったです。もちろん状況によってセリフも変化しますし、役もどんどん成長していくので、それを演技で楽しめるのが面白かったです。

――役作りで意識した部分はありますか?

板垣 さっきの話に戻るんですけど、SF的な要素もありつつ恋愛もある。コメディというよりは、どちらかといえばヒューマンものに近いテイストで、そこから役作りにおけるパワーをもらいました。結局、その役が本当に存在しているかどうかは分からない。きっと存在しているんだろうけど、もしかしたら実結の中だけで、本当は存在していないのかもしれない。ベースは現実だと思いますが、何回もタイムリープをしていくうちに、それは想像の話なのかもしれない。それぐらいあやふやなものでいたいなと思いながら演じていました。いわば「概念」で役をとらえていました。

――佑人は実結に恋心を抱きつつも、それを表に出すことなく、基本的に温かく見守っています。しかし、実結に思いをダイレクトに伝える展開の日もあり、一筋縄ではいかないキャラクターです。

板垣 とらえ方によっては、すごく嘘つきですよね。好きな人に想いを伝えたいけど伝えられない。親友に話を聞こうとしているけど、実際には聞いていない。そんな表裏一体のところを表すシーンが、朝の登校時に佑人はひょっとこのお面を被っていますけど、あれは「世紀の大嘘つき」というキャラクターで行きたかったからなんです。良い意味でも悪い意味でも、実結を傷つけないために嘘をつき続ける。それは優しさかもしれないし、もしかしたら残酷さかもしれないし、どちらかは分からないですよね。

――映画を見る人の判断に委ねるということですね。福本さんの印象はいかがでしたか?

板垣 すごく頼りになりますし、お芝居に理屈がある方で、カッコいいなと思いました。現場で映画の話をしたときもそうですし、お芝居を見ていても、本当に映画が好きなんだと伝わってきます。莉子ちゃんが、実結の感情や気持ちをどう分析しているのか話していたんですが、その分析がすごく理解できました。理屈があり、パッションがあり、そこにロックを感じて素敵でした。