コロナ禍で過ごしたインドは今でもトラウマがある

――コロナ禍のインドはいかがでしたか?

熊谷 2020年はインドの状況が酷くなって、すぐにでも日本に帰らなければいけない状態になりました。帰国して半年間インドに戻る便がなくなってしまったので、ずっと日本にいました。ようやく戻れたときも外出への不安が残る雰囲気で、家の中で過ごす時間が多かったです。2021年4月ごろのインドでの第2波はとてつもなくて、常に外で救急車が飛び交っていました。誰かが亡くなったという話を聞くことにも慣れてしまうくらいでした。今でもその時期に対するトラウマのようなものがあります。

――コロナで一時帰国していた時、インドが恋しくなることはありましたか?

熊谷 インドから避難してきている形なので、自分の学校も向こうにあるし、ずっと関わってきた人たちも向こうにいるので、自分だけが日本に戻ったことに対しては逃げたというか、全部投げ捨ててしまったような気がしていました。でも日本は生まれ育った国で、そこに生じるズレというか矛盾で、自分の居場所はどこなんだろうと考えてしまうことがありました。日本の同級生も修学旅行や文化祭が中止になってしまったり、大変なのは自分だけじゃないし、それぞれ大変な状況で。どれだけ生活に支障が出たかは人によって違うかもしれないですけど、それぞれの形のトラウマや傷はあると思うんですよね。

――インドでの経験は進路選択にも影響はありましたか?

熊谷 外に出ることへの不安が少なくなったというか、一歩踏み出すことへの認識が変わりました。もちろん軽くなった訳ではありませんが、勇気を出して体当たりでも一歩踏み出してみたら、意外に新しい出会いがあるかもしれないことに気づきました。そもそも、その選択肢があること自体、恵まれていることですし。進路についても、日本国内だけが選択肢ではないと思えるようになったかもしれません。

――大学進学を予定しているそうですが、どのような勉強を今後したいですか?

熊谷 幅広くいろんなことを学びたいです。将来的には国などのボーダーに関わらず、さまざまな人や価値観に出会いたいです。

――同世代のティーン読者に、『JK、インドで常識ぶっ壊される』をどういう風に読んでもらいたいですか?

熊谷 一口にJKと言っても、高校生の中にもいろんな価値観があるし、高校生の中の常識も一つではないと思います。一人ひとりが自分の常識と思っているものは何だろう、もしかしたらそれは誰かに押し付けられたものかもしれないし、逆にみんなが常識だと思っていることが、実は自分だけの個性が表れていることなのかもしれない。この本はインドという切り口ではありますが、いろんな人や物、場所を探求して、しがらみのようなものを剥がしていくきっかけにしてもらえると面白いんじゃないかなと思います。

Information

『JK、インドで常識ぶっ壊される』
好評発売中

著者:熊谷はるか
定価:1,540円(税込)
出版社:河出書房新社

日本でキラキラのJK(女子高生)ライフをエンジョイするはずだった。だけど、突然一家でインドに移ることに。「ごはんはカレーしかなくて、汚くて、治安が悪い」。そんなイメージは、住んでみると一変した。外国人にもフレンドリーな人々。多様な食文化。心躍る豊かな出会いの一方で、折れそうな腕を伸ばし車窓をノックする物乞いの姿。そして、高校生活のなか出会ったスラムの子どもたち──。目に見える格差、目に見えぬ不条理。ステレオタイプの真相。光と影。内と外。何も知らない女子高生だからこそ見えた景色があった。日本の快適な暮らしに慣れ切ったJKによる、 おかしくて真面目な「エモい」インド滞在記。

公式サイト

熊谷はるか

高校生

2003年生まれ。高校入学を目前に控えた中学3年生の8月、父親の転勤によりインドへ引っ越す。2020年夏、インドで暮らした日々を書籍化すべく「第16回出版甲子園」に応募、初のオンライン開催となった決勝大会のプレゼンバトルを堂々勝ち抜き、大会史上初となる高校生でのグランプリ受賞。2021年6月、高校3年生で帰国。『JK、インドで常識ぶっ壊される』が初の著作となる。

Photographer::Masahiko Matsuzawa,Interviewer:Takahiro Iguchi