場所が変わっても 濃い人は残っていく
――俳優になるまでのキャリアをお伺いしたいのですが、もともと獣医志望だったと伺いました。
瀬戸 小学6年生までは獣医という職業を知らなくて、ムツゴロウ王国で働きたかったんです。中学生になって、もっと具体的に進路を考えるようになった段階で、車椅子の犬のドキュメンタリーを見ました。そこに獣医さんも出ていて、獣医という職業があることを知って、獣医に憧れるようになりました。
――獣医になるために具体的な努力をされていたのですか?
瀬戸 そうですね。この世界に入るまでは獣医を目指して、進学校の高校に通っていました。ところが母親が、今所属している事務所のオーディションに書類を送っていて、それに受かっちゃったんです
――それまではエンタメの世界に興味はありましたか?
瀬戸 まったくなかったです。ただ僕の出身の福岡県はお祭りなど、芸事に盛んな土地柄で。表現することは嫌いじゃないし、小さい頃から劇も含めてやっていました。表に出ることに苦手意識はなかったですが、それを楽しいと思っていたのかはよく覚えてないです。
――お母様はなぜオーディションの書類を送っていたのでしょうか?
瀬戸 もともと母親がピアニストになりたかったのですが、諦めざるを得なくて。息子を表現者にしたかったようです。
――知らないうちに書類を送られたことを知ったときはどのような気持ちでしたか?
瀬戸 最初は嫌でした。オーディションのために東京に行くのが面倒くさくて行かなかったんです。そしたら受かっていたんですよ(笑)。だから、「これは何かあるのかな」と思いました。
――そのときに獣医になりたいという夢は伝えていたんですか?
瀬戸 伝えていたと思います。たぶん母親もオーディションに受かると思っていなかったんじゃないですかね。でも合格したら上京しなきゃいけないということで親の覚悟を感じましたし、親孝行したかったという気持ちもあって、こちらの道に進みました。
――それまで地元で築いてきた人間関係がリセットされることに寂しさはありませんでしたか?
瀬戸 濃い人は普通に残っていくので、そこは感じなかったです。地元の学校への未練というよりも、仕事を頑張らないと、という気持ちが強かったです。
――東京への憧れはありましたか?
瀬戸 まったくなかったです。だから、なかなか馴染むことができなかったです。ただ、すぐに仕事が軌道に乗ったので、徐々に馴染んできて、東京での生活が楽しくなっていきました。もちろん事務所の支えが大きかったのですが、コンスタントに仕事をもらえて、いろいろな経験をさせてもらえていることで今の自分が出来上がっています。早い段階で、この世界を知れたことも今に活きていると思いますし、そういった意味でも本当に幸せだし、自分は恵まれています。だからこそそれを無駄にしちゃいけないなと常に思います。
――この仕事一本でいこうという覚悟は最初からありましたか?
瀬戸 活動を続けていく中で、ですね。いつからなのかは具体的には分からないですけど、俳優は天職というか、一生続けていく仕事なのだろうなと思っています。
――最後に、進路選択を控える読者にメッセージをお願いします。
瀬戸 何事も意地がなかったり、好きじゃなかったりすると続けられないと思います。僕も最初は「辞めるのが恥ずかしい」とか、「親が泣くから」とか、そんなことを考えると辞められなくて、意地で続けていました。その結果、こうやって仕事をいただいていますし、今は表現することがとても好きです。長く続けたい気持ちがあるんだったら、自分が興味のあることをやることが大切です。たとえばゲームに興味があるならゲーム会社を目指す、でもいいと思います。何か「好き」を見つけられそうだなとか、好きになれそうだなと感じるなら、そういうものをヒントに、大学や専門学校を探す、もしくは就職する。「なんとなく」というのが一番ダメだと思います。
Information
『愛なのに』
2022年2月25日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:城定秀夫×脚本:今泉⼒哉
出演:瀬⼾康史 さとうほなみ 河合優実 中島歩 向⾥祐⾹ 丈太郎 毎熊克哉 オセロ(猫)
©2021『愛なのに』フィルムパートナーズ
古本屋の店主・多⽥浩司(瀬⼾康史)は、昔のバイト仲間、一花(さとうほなみ)のことが忘れられない。その古本屋には、女子高生・岬(河合優実)が通い、多田に一途に求婚してくる。一方、亮介(中島歩)と婚約中の一花。結婚式の準備に追われる彼女は、亮介とウェディングプランナーの美樹(向⾥祐⾹)が男女の関係になっていることを知らずにいて……。

瀬戸康史
俳優
1988年5月18日生まれ。福岡県出身。2005年、俳優デビュー。近年の主な出演作品に、ドラマ「透明なゆりかご」(18)、NHK連続テレビ小説「まんぷく」(18)、「私の家政夫ナギサさん」(20)、主演「男コピーライター、育休をとる。」(21)、映画『寝ても覚めても』(18/濱口竜介)、『劇場版 ルパンの娘』(21/武内英樹)、『コンフィデンスマンJP 英雄編』(22/田中亮)、舞台「陥没」(17)「ドクター・ホフマンのサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜」(19/共に作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)、ミュージカル「日本の歴史」(21/演出:三谷幸喜)、主演舞台「彼女を笑う人がいても」(21/演出:栗山民也)などがある。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、Ama zonオリジナルドラマ「恋に落ちたおひとりさま」ほか、公開待機作が多数控えている。
Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Takahiro Iguchi, Stylist:Youjirou Kobayashi(Yolken), Hair&Make:Motoko Suga
衣装協力
ジャケット/¥46,200/ EULLA(GOOD LOSER) シャツ/¥29,700/SHAREEF(Sian PR) そのほかはスタイリスト私物
《問合せ先》 GOOD LOSER 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-3-11 TEL:03-6455-1440 Sian PR 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-2-3 ルカビルII 2F~4F TEL:03-6662-5525