声優さんはスイッチの切り替えがすごい

――実写の演技との違いはありましたか?

堀田 普段のお芝居だと、セリフがないところは顔や雰囲気で表現できますが、声優はすべて声で作らないといけない。声優さんたちは、「ここに声を乗せてください」と指示があっても、すぐに対応ができます。でも私は初めてということもあって、その“間”を何で埋めたらいいのか分からなくて……。そんなときに音響監督の方が、「分からなくなったら『あいうえお』で考えてください」と仰ってくれたんです。どういうことかと言うと、「『い』以外はすべてセリフとして作れます」と。たとえば吐息で「あー」とか、疑問形で「お?」「え?」はできます。そんなアドバイスを参考にしながら、家で何パターンか自分なりに間を作って携帯で声を録音して、どういう風に聞こえるかを試したりもしました。

――実写では自分の声にそこまで向き合うことはないですよね。

堀田 普段自分がしゃべって耳から入ってくる声と、映像を通す声では全然違います。それに、たまきというキャラクターになっての声でもあるので、出来上がった作品を初めて見たときに、私なのに私じゃない不思議な感覚でした。

――今お話ししている声と、たまきの声ではトーンも違います。

堀田 たまきは天真爛漫で明るい女の子。初めに監督から「高いところで声を出してほしい」と言われていたのもあって、いつもより高い声を意識しました。

――実写だと動きで表現できるところを、声だけで表現するのも難しそうです。

堀田 走っているときの息遣いが混じった声や、飲み物を飲みながら話して吹き出してしまう声など、普段出さないような声を出すときに、自分なりにやってみたらトーンが違って、すごく恥ずかしかったです(笑)。でも分からないなりに思い切って、「たまきと同じような一生懸命さを声に乗せていけば、たまきに繋がる」と信じて、全身で表現しました。

――場所の違いによっても、声を変化させる必要もありますよね。

堀田 「この2人は外でしゃべっているから大きい声を出そう」とか、「この距離感だったらこうだな」など、自分の中で想像して考えました。グライダーのシーンだと、「機内だとどういう風に音がこもるんだろう?」「後ろに座っている人にはどう聞こえるんだろう?」と、また違った表現が必要で。実際に、グライダーに乗ることができなかったので、そこは皆さんに聞きながら調節していきました。

――声優さんとお仕事をして、どんなところがすごいなと感じましたか?

堀田 対応の早さです。もちろん俳優も監督から言われたことを、できるだけ素早く自分に落とし込むという部分では一緒です。ただ実写だと、本番前の段取りやテストのときに、ちょっと考える時間があるので、もう少し自分と向き合える時間が長いです。声優の現場は、言われたらすぐに「はい」って始まって、皆さんすぐに対応されるので、最初はなかなかついていけませんでした。それに俳優のときは「用意、はい!」というのがあってのスタートなんですけど、声優の現場は「じゃあ、〇シーンのここをお願いします!」と言われた瞬間から映像がスタートします。それに合わせて皆さん役に入っていかれるのですが、スイッチの切り替えがすごいなと。

――俳優業では現場でディスカッションしながら役を作っていくことも多いと思いますが、声優の現場でもそういうところはあるのでしょうか?

堀田 この作品でもディスカッションはありましたが、方向性が固まった後がとても早いんです。

――完成した作品を見て、どんな印象を受けましたか?

堀田 感動しました。色がきれいでありながら、とてもリアルな画で、映像から空の青さ、風に揺れる草、花など、温度が伝わってくるような感覚でした。ずっとやりたかったことが叶ったんだと思うと感慨深かったですし、周りの声優の皆さんに助けてもらっているんだなと強く感じました。

――今後も声優業にチャレンジしていきたいですか?

堀田 ぜひやっていきたいです!