“普通”の主人公を演じる大変さを痛感した

――『この街と私』の主演が決まったときは、どんなお気持ちでしたか?

上原 オーディションで選んでいただいたんですが、最初はそこまで主演という意識はなかったんです。ただ準備をしていくうちに、自分が核としてちゃんと立っていないと現場として成立しないなと感じるようになりました。いつもは、ちょっと余白があっても、それを現場で埋めようという感じで、そこまで作品を背負うという経験がなかったので、初めて主演であることを実感した気がします。ただ真ん中に立つといっても、役柄・芝居的に追い込まなければいけないとか、キャラを作らなきゃいけないということはありませんでした。

――上原さん演じる村田美希は、お笑いの番組が作りたくて制作会社に入った23歳のADで、理想と現実の差に思い悩む日々を送っています。演じる上で、どんなことを意識しましたか?

上原 美希は「普通の女の子」ですが、“普通”の大変さを痛感しました。以前出演した映画で、主役が一番普通の子という作品があって、普通の役こそ難しいと聞いたことがありました。そのときは私が主演ではなかったので、どれだけ大変なのかは分かりませんでした。

――個性的なキャラクターのほうが作り込みやすいということでしょうか?

上原 たとえば相手のことを憎んでいて、「刺してやる!」みたいな役は作りやすいですよね(笑)。そういうものがない、フラットに近い状態の演技は不安でしたが、それがいい感じに出ればいいなと思いながら演じました。

――街頭インタビューのシーンで実際に一般の方に話を聞くなど、ドキュメンタリータッチの作品ですが、セリフはどの程度まで台本に書かれていたのでしょうか?

上原 ほぼ台本に書いてありましたが、細かい部分や、台本で掴みきれなかった部分は撮影中、監督に聞いていました。

――台本を読んだときの印象を教えてください。

上原 なにかしら美希にリンクするところはあると思いました。自分の中でものすごいビジョンがあるのに、そこに到達できない自分がいて。捨て身で目指していた世界に入ってみたものの、最初から好きなことができる訳じゃないし、いろんな制約がある中で自分を表現しなきゃいけない。それって目指すものは違っても、誰にとっても最初の躓きになると思います。撮影していた時期は、まだ二十歳だったので、周りに就職している友達が少なくて、基本的に監督から話を聞いたりしながら役作りをしました。