文章は一人の世界なので自由さを感じたのかもしれない

――初のエッセイ集『はい、こんにちは Chim↑Pom エリイの生活と意見』を執筆されたきっかけを教えてください。

エリイ 2019年5月号の『月刊新潮』で「平成の終焉―何が生まれ何が消えたのか」というアンケートの文章を書かせていただいたのがきっかけです。そのときに初めて編集の方とお会いして、連載をしませんかと声をかけていただきました。

――実際に文章を書き始めていかがでしたか?

エリイ 本格的な文芸誌に書いたのは初めてでした。3000文字という長い文章を書いたことがなかったので、長い文章を書く感覚が分からなかったのですが、書いていくうちに体感として身体の中に入ってきて、自分のものになっていく気がしました。

――エリイさんはアーティストコレクティブ「Chim↑Pom」で現代アート作品を制作していらっしゃいます。アート作品を制作するときと文章を書くときで、感覚は違うのでしょうか?

エリイ 文章って自由なんだと興奮しましたし、何でもできるなぁって思いました。アートは6人のコレクティブで取り組んでいますが、文章は一人の世界なので、そこに自由さを感じたのかもしれません。今も小説を書いているのですが、それがすごく面白い。今回のエッセイを書いていなければ絶対に書けなかったものだと思います。

――エッセイの中には聖書の言葉がたくさん織り交ぜられていますが、カトリックの学校に通っていたエリイさんにとって聖書は身近な存在でしたか?

エリイ 聖書は机の中にいつも入っていたし、黒板とか廊下にも聖書の言葉がいっぱい貼ってありました。朝は聖歌から始まってお祈りをして、お昼もまたお祈りをして、ミサもあって、宗教をベースに学校生活が回っていました。

――聖書を読んで、共感した部分を取り入れていったのでしょうか?

エリイ 特に聖書が好きという訳でもなかったので、最初は取り入れる気はありませんでした。ただ、聖書を読んでいると「めっちゃウケる」という気持ちになることがあったんです。旧約聖書って本当にひどいなぁ、みたいな。そういう感覚が残っているのか、ふとした会話の瞬間に聖書にまつわるエピソードが出てきたりします。同級生と相席居酒屋に行ってみたことがあったのですが、そのときもなぜかノアの箱舟の話になって。その場にいた方は訳も分からず話を合わせてくれましたが、申し訳ないことをしたと思って二度と行かないと決めました。