素晴らしい人ってどんな人なんだろう

――今泉監督の演出はいかがでしたか?

毎熊 役者と一緒に考えていく方で、そうすることで僕らが向かうべき場所を設定していくんです。監督によっては細かく演出される方もいますが、今泉さんの場合は自分のイメージに、役者たちのイメージも乗せていくという感じです。もちろん今泉さんの中で筋が通っているものがあるので、一度役者を自由に動かせて、キャラクターに関することなど、どのようにしたら上手くいくのかを軌道修正していくんです。

――広重は社内に浮気相手がいる、いわゆる「クズ男」ですが、共感する部分はありましたか?

毎熊 僕が今まで、いろんな映画で演じてきた役は、けっこうクズって言われがちなんですよ(笑)。ただ、逆にクズじゃない人、素晴らしい人ってどんな人なんだろうと思うんです。いろんなタイプのクズがあると思いますし、今回の場合は、奥様方が見たらクズって言うかもしれないし、男が見たなら「分かるよ」って思うかもしれません。ただ僕は広重が特別非道な人間には思えないんですよね。本当は作家として書きたいものがあったけど、芽が出ずに週刊誌記者をやっていて、漫画家の妻は自分のやりたいことができている。でも逆に夫はやりたいことができているのに、妻は夢を諦めて、やりたくもない仕事をしていた可能性もある。夫婦にも良い関係の時期があっただろうし、当事者にしか分からない何かがズレていって、お互いに何かを埋めたいがために、違うほうを見てしまっている。そういうことは誰にでも起きうることじゃないかなと思うんです。やりたいけれど上手くいかなかっただけ。その気持ちは分からなくもないですし、僕自身そういう風に感じていた時期もあります。