オーサムはDIY精神があって、やっていることが全部面白かった
――オーサムを結成するまで、それぞれ違うバンドで活動されていますが、これまでのバンドとオーサムの違いはありますか?
atagi 明確に違ったのは動員が増える速さです。月に何本かあるライブに何人来てくださるかはアマチュアバンドにとってとても大事なことで、お客さんを毎回20人以上呼ぶのは大変なことです。以前、やっていたバンドは良くて10数人というレベルでした。デカいイベントだったら頑張って告知して、もっと人を集めて。でもオーサムは初ライブから20人を切ったことがなかったはずです。僕はライブハウスで働いていたこともあって、そういう目で見てしまうんですが、ラッキーなことに最初から注目してくれている人がいて、人の目に留まるような部分がどこかにあったのかもしれません。
――集客のために、何か特別なことはされましたか?
atagi 知ってもらうための努力はしていたと思います。音楽性はもちろん大切だと思うんですけど、SoundCloudなどで音源を公開したり、いろんな人に手伝ってもらいながらMVを作ったり、話題になるような広報活動に力を入れていたと思います。初ライブの前から、それを徹底してやっていたから、最初からお客さんが来てくださったんだと思います。
――バンドの方向性について、当時からメンバーの意見は一致していましたか?
atagi そんなことないです。バンドなんてみんな一致してないものだと思います。グチャグチャのままスタートした感じですね(笑)。
モリシー 結成当時は、みんな違うところを向いていました。僕は前のバンドを5年続けて、そろそろ飽きてきたなと思っていたところにオーサムの話がきて加入して。それから2年も経たないうちにメジャーデビューするという流れになりました。前のバンドはアンチメジャー志向だったんですが、「メジャーデビューなんて人生に何回もできないよね」ってことで前のバンドは辞めたんです。
atagi 結成当時のオーサムには「逆・鉄の掟」みたいなのがあって、「掛け持ちオッケー、片手間オッケー」だったんです。メンバーそれぞれ何をやってもいいし、やりたいことの片隅にこのバンドがあったらいい、くらいの感じで。その緩さが最初は良かったのかもしれないね。メジャーデビューしてからはさすがにちょっと変わりましたけどね。
モリシー ぴりついたよね(笑)。
atagi 結成半年後にはメジャーデビューが決まっていたから、スピード感もおかしかったんです。
――PORINさんは、結成から約1年後にオーサムに加入しますが、大学卒業後はどんな生活を送っていたんですか?
PORIN 大学卒業後、ライブハウスやバンド周りの人たちにたくさん出会って、そういうカルチャーに触れたのがもの凄く楽しくて。とにかく毎日ずーっと遊んでいる感覚でした。自由なものってみんな憧れるじゃないですか。オーサムに入ってからは、自分たちでMVも作ったり、夜中に自分たちが働いているスタジオでレコーディングしたり。DIY精神があって、やっていることが全部面白かったです。
――メジャーデビューしたことでメンバー間の関係性は変化しましたか?
PORIN すごく変わったんじゃないかな。
atagi 結成当時は和気あいあいとできていたところがガチになって、仕事になった途端に責任感が生まれる。そうすると、みんなの正義感がすれ違う訳です。当時はメンバー5人だったんですが、5人それぞれの正義感がある。良かれと思ってしたことでも、お互いに責任感をもってやっているからこそ、それが許せなくなってくるんですよね。
――3人は脱退を考えたことはなかったんですか?
PORIN それぞれが辞めたいと思うターニングポイントはあったよね。
――踏みとどまることができたのはなぜでしょうか?
モリシー 単純に子どもじゃないからというところもあります。僕に関しては家族がいましたし、そういう現実的なところも大きく響いています。自分だけだったら全然辞めても良かったんですけど、幸いにも自分だけの人生じゃなくなってしまった。だから踏みとどまるところに繋がりました。
PORIN 私はライブと新曲ですね。ライブのときに「これだけ待ってくれている人がいるんだ」ということに心打たれますし、新しい曲が上がってきたときに「こんなにいい曲が作れるんだ」という希望に繋がっていきます。だからライブができなかった2021年はしんどかったです。
atagi みんな辞めようと考えたことはあると思いますし、僕も同様にありました。結局はタイミングだと思います。そのときの自分の状況というか、さっきモリシーが言ったみたいに、現実的な問題で続けるという選択もあります。タイミングとか、時の運とか、みんなのバイオリズムとかが悪い方に偏ってしまうと、バンドって簡単に解散するし、メンバーも脱退する。そういうもんだと思っています。それは誰が悪いとかではなくて、みんなが経験していることで、僕も悩んでいたときに、幸いにも周りの人が支えてくれるタイミングだったから、たまたま残る選択をしました。