再録曲は今の記録みたいな感覚がある
――1stデジタルEP『hodgepodge』の作品の全体像について教えてください。
スズキユウスケ(以下ユウスケ) 改名前のTheドーテーズ時代の曲、オレンジスパイニクラブになってからのインディーズ時代の再録曲と、新たに作った新曲2曲がごちゃごちゃ混じった全7曲入りのEPです。それで「『hodgepodge』=ごちゃ混ぜ」という意味のタイトルを付けさせてもらいました。約5年くらいの時間を1枚にした、僕らの今と昔、過去と現在みたいな作品になっています。
――バンドのいろんな顔が見えます。
ユウスケ すごいバラードがある訳じゃないし、激しい曲も聴かせる曲もあって落ち着きがない感じですよね(笑)。でも、そこが自分たちっぽくていいなと思っています。
──バンドの歴史を駆け足でたどるような作品を、このタイミングで出そうと思ったきっかけは?
スズキナオト(以下ナオト) 今、廃盤になっている音源を聴けるコンテンツがなかったので、いつか出したいなと思っていました。昨年メジャーデビューもしたし、いろんな人に聴いてもらいたいなと思って、今回、新曲2曲と一緒に配信リリースという形で出させてもらいました。
――新曲「7997」について聞かせてください。
ナオト 僕らは兄貴(ユウスケ)と自分が曲を作っているんですけど、これは僕が作った曲です。初めてドラマのタイアップのお話をいただいて。『#居酒屋新幹線』というドラマで、その電車の雰囲気に合うようなもの、人との出会いみたいなものを曲に落とし込んでほしいというテーマがあったので、それを軸にして聴く人によって表情が変わる曲にしようと思いました。
――気持ちの伝え方、人との距離感を心地いいメロディーで届けるナンバーですね。サウンド面はどんなところにこだわりましたか?
ナオト サウンドは80年代っぽいシンプルでチープな音がいいのかなと思いました。メロディーはゆるい感じにしようと思いました。
ユウスケ 最初にナオトが曲を持ってきたときは、もっとゆったりめでキーも違ったんです。レコーディング中にみんなで話し合って、かなりいい感じになりました。メロディーも歌いやすいし、すっと耳に入ってくる曲だなって印象です。
ゆりと 音はチープさを狙いつつ、それがメロディーと歌詞と上手く相まって、最近あまりないような良い楽曲になったと思います。
ゆっきー 最初にデモでもらったときの印象は、もっと哀愁のある古い日本のロックみたいなイメージだったんです。70年代の機材を使ったりして、曲とサウンドが上手くハマったなという感じです。
――細かい話になりますが、曲の構成が面白いですね。Aメロからすぐサビに行ったり、途中でセカンドラインっぽいリズムが入ったりと、シンプルでありながら変化球も混ざっているなと思いました。
ナオト そうですね。最初に1サビまで作ったんですけど、このままだと普通すぎるしひとひねり欲しくなって、だったら大胆にマイナーコードから始めちゃおうとかそういうことをしてみました。なんとなくフックが欲しいという思いがあったんです。
――普通になっちゃうのはつまらないという感覚は、バンドが根底に持ってるものですか?
ナオト はい、そういうことをやりがちなバンドです。
ユウスケ メンバーみんな、ひねりたい気持ちが強いんですよ。
――5曲の再録曲が収録されていますが、どのように選曲されたんですか。
ユウスケ ずっとライブでやってるけど音源で聴けないお客さんもいるなということで、ライブの出現率が高い曲たちを選びました。
――再レコーディングでどんな部分が変わりましたか。
ユウスケ ライブ感が出たかなと思いますね。原曲だとちょっと軽い感じがしてたんですけど、重みが出たように感じます。
ナオト 前の音源に寄せるよりか、今ライブでやっているテンションでレコーディングしたんです。テンポも速くなってるし、いい意味で荒さが出ています。
ゆりと ライブをやっていく中でできたフレーズみたいなのもあるし、それをそのまま出しました。なので、レコーディングも普段通りのライブの感じでやりました。
ゆっきー 昔レコーディングした曲が、その後にアレンジがころころ変わったりするんです。だから今後も今回録ったものから変わるかもしれないんです。なので再録曲は、その曲の今の記録みたいな感覚があります。
――EPの中からティーンにオススメしたい曲を挙げるとすると?
ナオト 「モザイク」かな。歌詞がリアルなんですよ。
──現実に直面した後のやるせない感じがリアルに描かれてます。
ナオト すでにそういう経験がある人もいるかもしれないし、今後していくかもしれないし。それがなんとなくティーンっぽいのかなと思いました。
――どうでもいいやと諦めそうになっていたけど、何かのきっかけでハッと気づく瞬間で終わる感じはティーンっぽい印象があります。
ナオト まさにそうですね。