『裸々(らら)』の執筆は自分が生きていく上で、とても大切な時間になった

――自伝的エッセイ『裸々(らら)』ですが、タイトル通り赤裸々な内容です。

村上 もともとnoteに書き始めたのですが、書籍にしてわざわざお金を払って買って読んでくれる人には濃度の高いものをと考えたんです。丸裸で書いたほうが、読んでくれる方も楽しんでくれる面積が大きくなるのかなと。

――noteに書き始めたきっかけは?

村上 きっかけはコロナ禍です。2020年4月のスケジュールがほぼ真っ白になって、自分で何か仕事を作らなければ、と思ったときにnoteのことを思い出しました。有料記事にすることで、自分の中で仕事をしているという感覚が生まれたように思います。noteは専門的な内容を載せるという特徴があると思っています。自分が体重を乗っけて、分量的にもたくさん書けるもので、お笑いのこと、自分のことという内容になりました。

――今までにも4冊、本を出されていますが、noteでの執筆は違いましたか?

村上 以前に書いた短編小説や技術論、コミュニケーションの本と違いました。小説ではありませんが、長文で自分の話を物語として書くのは初めての体験だったので、書き方的には難しい部分もありました。

――ブログのような無料公開とは書く内容も変わるのでしょうか?

村上 無料公開ならポップにというか、着飾る内容になっていたかもしれません。よくも悪くも入り口が広いから、茶々を入れられやすいというか、とやかく言われることも多いですから。でもnoteの有料記事なら、コントの台本をそのまま上げて、それに付随したもの、つまりこういう思惑で作ったという裏側を限定された方々にも楽しんでもらえるのかなと。その延長線上で、自伝的な文章も書くようになりました。

――書いたことで新たな発見はありましたか?

村上 自分はこう思ってここまでやってきたんだと、思い出したり整理できたりした部分は多かったと思います。コロナ禍で立ち止まらざるを得ない状況になって、今しかできないことを見つけられたのは、自分が生きていく上で、とても大切な時間になりました。

――KAƵMAさんとの出会いから丁寧に綴っていて、一種の相方論になっているなという印象も受けました。

村上 自分のことを書く以上、自分のことが中心になるので、おのずと池田(KAƵMA)を初めて知ったときのこと、コンビを組む前から始まります。できるだけ当時の思いで書こうと思ったんですが、しずるを組むところから書いてしまうとただの振り返りになってしまう気がしました。コンビを組むか決める前、NSCで池田から受けた衝撃から書くことで、完全にゼロの頃のことを思い出しました。自分が辿ってきたもの、この時こう思ったという感情を大事にしました。

――その時々のことを鮮明に覚えていらっしゃるのも驚きでした。

村上 意外と覚えていましたね。たぶん、そのときの自分の中で引っかかるものがあったことは覚えているほうだと思います。池田と初めて会話したときに、あいつが「揖保乃糸」を持っているところって、すごく細かくて具体的なシーンが、そのときに自分の中に引っかかるものがあったから覚えています。あと僕たち芸人は、過去のことを細かくしゃべって描写するエピソードトークで鍛錬されているので、もしかしたら関係しているのかもしれません。他の業種の方に比べて自分の過去の経験を話す機会が多いんですよね。