できれば演じないで、そこに存在していたい

――中川監督の印象はいかがでしたか?

岸井 ほぼ同世代なんですが、先生みたいな監督でした。すごくスマートな方なんですけど、自分の頭の中でこうなっている、こういう風にしたいんですということを説明する上で、「中川さん語」みたいなのがあるんです。撮影当初はまだ共通言語がない状態なので、伝えたいことがあるのは分かるけど、細部までは分からないというようなことがありました。衣装合わせのときも、「こうじゃないんだよな」と仰っていて、衣装部の方が「どういう感じですか?」と聞いても、「いや~」みたいな感じ(笑)。監督独特の言葉を拾って、確認する作業も楽しかったし、監督と対等に話し合いができる現場でした。

――台本は当初から、かなり変更があったそうですね。

岸井 クランクインする前にだいぶ変わりましたし、撮影中に書き足す部分もありました。撮影は去年だったんですが、もともとは一昨年に撮る予定だったので、延期した期間中に、どんどん台本が変わっていきました。クランクインの1~2週間前に、「ほぼほぼこれでいきます」みたいな台本が届いたときに、セリフだけでなく、真奈とすみれの2人のシーンの雰囲気も変わっていました。

――中川監督は真奈の心情はどのように説明されたのでしょうか?

岸井 ご自身の体験は話されるんですけど、だからといって「どうしてほしい」という説明はなかったです。自分で考える部分が大きかったです。

――この映画に限らず、岸井さんが役を演じる上で大切にされていることを教えてください。

岸井 できれば演じないで、そこに存在していられたらと思っています。映画はチームで作っていくもので、一つのシーンを捉えるためにカメラマンがいて、監督がディレクションする。できるだけ自分が矢印の方向を決めないように、そこにいたいっていう気持ちがあります。ただ演じている以上、どうしても自分の気持ちと重ねてしまうから「今、私はこうしようとしたかもしれない」という瞬間があります。そう思ったときには、どの監督にもバレています。

――台本の理解力も大切になってきそうですね。

岸井 自分のところだけじゃなくて、成り立ちの部分まで台本は読みこみます。最初は読者として読んで、話が大体分かってから改めて自分の役の目線で読みます。ただ初見の読者としての気持ちを忘れないようにはしたいんです。目線を変えて読むと、また違った感覚があって、最終的なチューニングは監督にしてもらっています。台本を読むのは好きなのでお風呂でいつも読んでいます。