高校時代は夢を見つける旅をしていた

――高校時代のお話を伺います。中学時代は器械体操に打ち込まれていたそうですが、高校時代は何かに打ち込んでいましたか?

岸井 特にありませんでした。器械体操は自分の中で、中学3年生で終わっていたんですよね。

――どうして、そう感じたのでしょうか?

岸井 ずいぶん長く続けていたし、やり切った感があったので、もう一回挑戦しようと思えなくて辞めました。だから新たに何か夢を探さなきゃいけないと思って、高校生になって塾に通いました。学校では何もやりたいことが見つからなかったので、夏休みの間に保育ボランティアに行ったり、高校1年生のときから専門学校の見学に行ったり、いつも夢を見つける旅をしていた感じです。

――将来こういう仕事をしてみたいという具体的な職業はありましたか?

岸井 最初は美容師、それから調理師やパティシエなど、衣食住に関わる職業の中から選ぼうと思っていました。生活に根付いたものだったら、人の役に立てるんじゃないかと考えていました。ただ服については自分のセンスに自信がなかった(笑)。それで料理やパティシエの学校にも見学に行ったんですけどピンとこなくて。当時流行っていたラテアートに興味が出てきて、コーヒーが好きだったこともあってカフェの専門学校の見学にも行くことにしました。その途中でカメラマンの方に声をかけてもらったのが、この世界に入ったきっかけです。

――演技に興味はあったんですか?

岸井 そのときはなかったんですけど、母親の影響でミュージカルが大好きでした。映画も好きだったのでよく見ていましたが、あくまで観客としてでした。

――演技の経験もないのに、決断できた理由は?

岸井 専門学校を卒業しなくてもバリスタになれることが分かったからです(笑)。働いた経験が重視される職業なので、学校に通わなくてもバリスタになれるのなら、とりあえず事務所に所属して、芸能活動をしながらカフェでアルバイトしようと思ったんです。最初は仕事もないだろうし、掛け持ちできると思ったんです。ところがどこの店舗も面接で「事務所に入っている」というと落とされまして。

――事務所に所属しているとなかなか難しいかもしれませんね。

岸井 結局、カフェで働くことはできず、別のアルバイトをしていました。高校を卒業してから東京に出てくるまでずっと続けていて、「このままで大丈夫かしら?」と不安を感じることもありましたけど、結果的に役者としてやっていけるようになったので、人生何があるか分からないものです。

――最後に改めて『やがて海へと届く』の見どころを教えてください。

岸井 最近の映画は「答えはこれだ!」という作品が多いと思います。だけど個人的には、そのまま普段の生活に作用するような、自分のことを考えたり周りの人のことを考えたりできるような映画が好きなんです。真奈自身、最後に答えを見つけた訳じゃなくて、今まで直面していることにしか目を向けられなかったのが、少しずつ周りが見えてきたのではないかと思います。そんな真奈の姿から、何か受け取れるものがあったら嬉しいです。

Information

『やがて海へと届く』
2022年4月1日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー!

岸井ゆきの 浜辺美波
杉野遥亮 中崎敏
鶴田真由 中嶋朋子 新谷ゆづみ/光石研

監督:中川龍太郎
原作:彩瀬まる
脚本:中川龍太郎 梅原英司
©2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈(岸井ゆきの)は、自由奔放でミステリアスなすみれ(浜辺美波)と出会い親友になる。しかし、すみれは一人旅に出たまま突然いなくなってしまう。あれから5年、真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野(杉野遥亮)から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。そこには、真奈とすみれが過ごした時間と、知らなかった彼女の秘密が残されていた……。真奈はもう一度すみれと向き合うために、彼女が最後に旅した地へと向かう。本当の親友を探す旅の先で、真奈が見つけたものとは。

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岸井ゆきの

女優

1992年2月11日生まれ。神奈川県出身。2009年にドラマ「小公女セイラ」(TBS)で女優デビュー。以降映画、ドラマ、舞台と様々な作品に出演。2017年、映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』(森ガキ侑大監督)で映画初主演を務め、第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。2019年『愛がなんだ』(今泉力哉監督)では、第11回TAMA映画祭最優秀新進女優賞ならびに第43回日本アカデミー賞新人賞を獲得。そのほか近年の主な出演作には、映画『99.9ー刑事専門弁護士ーTHE MOVIE』(21/木村ひさし監督)、ドラマ「#家族募集します」(21/TBS)、「恋せぬふたり」(22/NHK)などがある。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Takahiro Iguchi, Stylist:Setsuko Morigami, Hair:YUUK,Make up:Yumi Endo