細やかな演出のために「中島健人さん立入禁止」の張り紙

――本作を拝見して、松本さんの熱演が素晴らしかったです。

松本 私が演じた美咲は、心は若いままで、体だけが老いていってしまうという女性です。心と体が一致しないということに、私も演じながらじれったさを感じました。気持ちだけは若いのに、体は老いていくことを表現するのは技術的に難しかったです。撮影に入る前に特殊メイクをしたり、杖を持たせてもらって、監督と相談しながら進めていきました。

――元気な身体で老いを表現するというのは本当に難しそうです。

松本 動きであるとか、技術的なことも大事なのですが、「この時点ではどれくらい心を閉ざしているのか」などを丁寧に考えていって、サングラスやマスクをつける意味なども監督に相談して役作りをしていきました。

――監督から渡された台本は、ご自身のパート以外はほぼ空白だったそうですね。

松本 すごく新鮮でした。今までいろいろな監督さんに、「最初から最後まで何度も何度も台本を読み込むことで、自分の立場を理解した上で演じる」ということを教えていただきました。それが今回は狭い視野で、自分の役のことだけを考えて演じてほしいと言われたんです。役というより、リアルな一人の女性の人生を演じられたのかなと思います。

――美咲のどのようなところに魅力を感じましたか?

松本 自分の気持ちに正直で、喜怒哀楽が隠せない、思ったままのことをそのまま言ってしまうような、溌溂とした女性だなと。一方で、努力家で前向きな人だなと思いました。

――中島健人さん演じる晴人との後半シーンは胸が痛くなる展開でした。

松本 美咲が老いてしまってから晴人と初めて顔を合わせるシーンがあるのですが、実際に私と(中島)健人君もあのシーンで久しぶりに顔を合わせました。それまで、スタッフさんたちは、私たちが絶対に鉢合わせしないようにいろいろと気を遣ってくださって。「健人君が今入ったから、もう入って大丈夫だよ」とか、「中島健人さん立入禁止」の張り紙も貼ってくれたり(笑)。なので、久しぶりに対面するシーンではお互い心臓がバクバクしていたと思います。そういった細やかな演出が、しっかりと画に映っている映画になっているのではないかなと思います。