思い入れの強いお笑い芸人へのラブレター

――2月発売の著書『敗北からの芸人論』が好評ですが、もともと書くことは好きでしたか?

徳井 意外と好きでした。実は誰も見ていない吉本のコラム(※ケータイよしもとの「ブラックホールロックンロール」)を160回近く書いていて、少ないですが根強いファンがいるんです(笑)。昔、吉本に「マンスリーよしもと」という雑誌があって、同期の又吉(直樹)くんなんかは1ページ、バーンと書いたりしていました。内心羨ましいなと思っていたのですが、コラム対決のような場でちょこちょこ戦っていたら、吉本の社員さんに「コラムを書いてみない?」と言われて書き出したんです。最初はうれしかったんですが、そのコラムがweb連載になってからは、「誰が見ているんだろう」と思いながらも一生懸命頑張って書いています。

――『敗北からの芸人論』は『デイリー新潮』の連載が元になっていますが、オファーを受けたときの感想はいかがでしたか。

徳井 単純にうれしかったです。先輩や後輩のことを書いているので、本人たちに迷惑がかからず、かつ面白くて感動できる話を書けたらいいなと思いました。

――徳井さんの前は、事務所の先輩・東野幸治さんが『週刊新潮』に連載をしていて、それを受け継いだ形でした。その東野さんの連載を集めた『この素晴らしき世界』は意識されましたか?

徳井 読ませていただきましたし、本もいただきました。ただ「芸人」について書くというテーマは同じでも、東野さんの場合はそれぞれの芸人さんについての笑えるエピソードトークです。しかもいじりの天才東野さんですから、全エピソードが面白い。一方僕の場合はお世話になった先輩、同期、後輩の「人間そのもの」を書いているようなもので、どちらかというと「いい話」ですね。面白いほうが格好いいんですけど、僕は「いい話」を書きたかったんです。

――取り上げるお笑い芸人はどのような基準で選んだのでしょうか?

徳井 思い入れがあるかどうか。テレビを見ただけで書いたのはコウテイぐらいです。コウテイについては、ただのファンという立場で書きましたが、それ以外は絡みがあって、オンオフ両方の顔を見ていて、今はこういう時期なんだろうな、などと思って書きました。

――付き合いがないのに、あれだけ書けるのはすごいですね。

徳井 単なるファンです。コウテイは若さゆえのエナジーがあふれ出ていますが、失敗する可能性の高い芸風だったから、「先回って失敗することが大事なんだよ。へこんだり直したりしなくていいんだよ」と勝手に伝えたかった。まあコウテイに限らず、全組に対してラブレターに近い感覚で書いています。

――伸びてくる若手芸人というものは売れる前から分かるものですか?

徳井 だいたいみんな尖っていて、鼻をへし折られて、そこから世間に伝える力と尖っているものを上手いことハイブリッドにして売れるというのがオーソドックスだと思いますが、そこの端境期を見るのが僕は好きなんです。尖るのも、諦めていきなり大衆向きになるのも、簡単ではあります。ただ両方を混ぜるというか、尖っていて面白いのに大衆向けのゴールデン番組にも出られるという難しいところを頑張っている人たちを見ると、ぐっときて、「頑張れ!」って応援したくなる。「自分たちのやりたい笑いを守りながらも、ちゃんと番組用の笑いも取ってるな」と思うんです。