これから第7世代がどうなっていくか面白いところ
――第7世代が出てきたときはどのような印象でしたか?
徳井 僕らは第6世代にあたると思いますが、テレビにちょこちょこ呼ばれているときに、「なんで僕がここにいるんだろう、誰でもいいじゃん」ということがあったんです。でも、この席はもともと僕らの先輩、かつて売れていた人たちが座っていた席なんだろうな、とふと思ったことがありました。だからそのうち、僕がいま座っている“誰でもいいじゃん”という席には、たぶんこの次に出てくる後輩が座るんだろうなと。先輩になるほど席が減っていく訳だから、若手が出るのは簡単だと思ったんです。第7世代が出てきたときは、僕がそんなふうに考えていた時期で、ついに僕らとは違う世代が入ってきて、クイズ番組とかVTRを見る番組に呼ばれていって、僕らはあまり呼ばれなくなっていくんだろうな、それを止めることはきっとできないんだろうな、と思っていました。
――本書でも取り上げているEXITや霜降り明星は勢いをキープしていますよね。
徳井 もっとEXITや霜降りは伸びると思いますが、第7世代の子たちも最初は勢いがあっても、だんだん勢いが落ちてくる子が出てくる頃で、ここからが面白いところです。そこで諦めるのは簡単ですし、それでもちゃんとアジャストしながら、この業界に居続けるかどうか……。
――コンプライアンス重視の風潮のなかで「尖り」を貫くのも大変そうです。
徳井 第7世代のなかでも「霜降り明星」の粗品は特に尖ってますよね。相当面白いと思います。しかもポップで明るい相方のせいやの存在が、粗品の尖りとすごくバランスがよくて。自分が面白いと思うことを、ウケなくてもやれるかどうか、求められていることと求められていないことのバランスをどう取るかも重要だと思います。
――本書の中でスリムクラブの回は、特に徳井さんの熱い思いを感じましたし、感動しました。
徳井 スリムクラブについては、僕が書きたかったので書きました。もともとスリムクラブはセンスの塊でしたから、そんな彼らの強みが再び出せている状況がすごくうれしい。あいつらも言葉には出しませんが、すげえ絶望を味わったはず。だから僕なりに微力ながらも褒めることで応援したかったんです。才能は昔からすごかったですから。声質が悪くて通らないのに、センスだけで、突然「M-1」の決勝に行ったんですからね。その後、変なケチをつけられて、落ちて、で、もう一回ネタの面白さで上がってくる……。そんなスリムクラブは表紙にしたいくらいです(笑)。
――平成ノブシコブシの同期は早くから売れているコンビも多いですが、それに対する嫉妬心はありましたか?
徳井 諦めに近かったですかね。同期のキングコング、南海キャンディーズ、NON STYLE、ピースは売れるのも早かったけど、ウチらは彼らに比べたら結果が出るスピードも遅かったし、先輩から面白いと言われることも圧倒的に少なかった。すごいなと思っていたので、最初からライバルとは思わなかったかな。
――若い頃は、そういう状況を受け入れるのも難しそうですが。
徳井 もっと自分ならできるというレベルだったら少しは思ったかもしれないけど、たとえば甲子園に行けなかったとはいえ、「俺は120キロ投げられるんだ」という人間が、160キロの球を投げるプロ選手を見て、「全然ダメだ、違うんだ」と悟るようなものですかね。
――それでも続けられたのはなぜでしょうか?
徳井 それが意外に120キロのストレートでも打ち取れるときがあったんです。さらに筋トレしたら130キロ出るようになって、スライダーとかフォークも覚えて、なんとか続けて打ち取ることができるようになった(笑)。それで「まあ、いけるかな」と思う訳ですが、格好いい160キロ級の人たちを見ているのも好きだったんです。
――どのような人が、長く業界に残り続けていくのでしょうか?
徳井 圧倒的にすごかった本格派の人は不祥事でもない限り、そうそう落ちません。そのまま上位リーグにいます。ただ、130キロしか出せないのに150キロ出せるフリをしていた人は落ちていきますね。
――NSC在学中から結果を残し、瞬く間にブレイクした後輩のオリエンタルラジオはどう映っていましたか?
徳井 オリラジは独特です。あいつらは160キロを出せる機械を作って入ってきたようなもので、初めて見る選手、僕の中ではジャンルがちょっと違いました。(藤森)慎吾はあっちゃん(中田敦彦)に寄り添うことが人生だと決めている。一方であっちゃんは、日本の芸能界という単位じゃないほうを選んでいる。面白いというより賢い。働き方改革を一番頑張ってくれました。オリラジのおかげで吉本も相当風通しがよくなったし、YouTubeもあいつらが始めたようなものです。いいことをしてくれました。