なるべく感情的にならずに俯瞰で見るように意識した
――『あの頃な』はやしろさんにとって初の小説になりますが、どうしてコロナ禍をテーマにしようと思ったのでしょうか?
マンボウやしろ(以下、やしろ) 最初にご提案をいただいたときは全然違う話を書こうと思っていました。打ち合わせの途中でコロナ禍が始まって、僕はラジオ(※「Skyrocket Company」)をやっていて普段からニュースを追いかけていることもあって、普通の状態ではなくなっていく中で、ちゃんとコロナに向き合う意味でも「コロナで書かせていただいてもいいですか?」というお話をさせていただきました。コロナをテーマに1つの物語を長く書くことは、自分の中で想像ができませんでしたが、いろいろ変だなと思うようなことが起き始めていたので、それを短編にさせていただきました。
――いつ頃、コロナ禍をテーマにしようと決めたのでしょうか?
やしろ 2020年の3月ぐらいです。2011年の東日本大震災のときも、僕は1~2年ほどそのことしか考えられなくなってしまって、今回もそうなるだろうなと自分で分かっていたところがあります。
――やしろさんは数々の舞台やドラマの脚本を手掛けていますが、今回のようなショートショートでの表現方法とは違いましたか?
やしろ まったく違いました。そのため、自分が描きたかったり、面白そうだなと思ったりする題材があっても、諦めたものがありました。星新一さんのショートショートのように、全部が切れ味がよいというテイストを入れたかったのですが、コロナ禍で大変な思いをしている方々もいる中で、なるべく感情的にならずに俯瞰で見るなど、そのあたりの兼ね合いをずっと考えていました。