雅功はまだ走れるかもしれないけど、俺はもう降りたんだ
大学から帰宅した彪我は自身の引っ越し先の物件探しや、就職活動の準備でせわしない。大学生活の終わり、それはすなわち二人の音楽という道も閉ざされる。ついに雅功が「やっぱり俺ともう一回やろう、音楽」と切り出す。「無理でしょ」「そういう話はやめよう」とつれない彪我。そんな彼に雅功は「俺らが解散しているのを知っているのは解散ライブを見に来ていた6人だけ」「まだ戻れる」と説得を試みる。
なんとか解散を取り消したい雅功。「俺は彪我と音楽をしたいんだよ」。しかし、彪我は「もう疲れた」「雅功はまだ走れるかもしれないけど、俺はもう降りたんだ」と語気を強めながら拒否する。「確かに話し合いはしたけど、彪我が勝手に決めただけだ」と食い下がる雅功。
「彪我だから意味がある。他の奴と音楽なんてできない」と雅功は説得を続けるも、議論を一方的に切り上げてサッと自分の部屋に戻ってしまう彪我。雅功はギターを持ち、「良い曲を作って、全部に意味を持たせてやる」と一人で曲作りを始める。ただ、これまでは彪我が曲を作っていたため、思うようにいかない。「一人じゃできねえよ‥‥…」。うなだれる雅功。
白いスポットライトが孤独感を煽る中、雅功が弾き語ったのは「朝が来る前に」。お互いの伝えきれない思いを吐露するように歌い上げる。続く「きみでした」「だるまさんがころんだ」では、下手から彪我が登場。丁寧にアルペジオを紡ぐ彪我と2人での歌唱は、同じ空間にいるのに、すれ違ったままの心の距離感を感じさせる。セリフも掛け合いもないが、ここでも雅功の一方通行な感情が表現されているようだ。