結果を出すことと続けることは別

――小説を書くときに大切にしていることは何でしょうか?

武田 価値観の決めつけをしないようにしています。こうじゃなきゃ絶対おかしい、と決めつけてしまうと、読者が「やっぱりそういうのは変なんだ」と生きづらくなってしまう。できるだけ多様な価値観を大切にしたいと思っています。キャラクターを作る上でも、一方が何か意見を出したら、別のキャラクターが違う考えを述べたり、そういうことは意識しています。

――小説のアイディアはどのようなときに浮かびますか?

武田 他の作品を観ているときが、一番インスピレーションを受けます。特に映画の予告は刺激されます。予告って、その映画の「面白い」の集大成だと思います。話の軸も何も分からないのに、どうなるんだろう?って脳がものすごく活性化する気がします。小説を書くにしても、いろんな作品を知らないと、逆にオリジナルなものを作れません。知った上で書くというのが大事だと思います。

――先ほども、あらゆるコンテンツが好きだと仰っていましたね。

武田 ゲームも大好きで、すごく刺激を受けます。今も仕事の合間をみては「ELDEN RING」をプレイしています。小説は、あまりに良い作品を読むと「私もこういうものが書きたかった」と嫉妬のような感情を抱いてしまうことがありますが、ゲームの場合は気楽に楽しめるんです。ゲームでのベストなストーリーというのは、小説にベストなストーリーとは違います。ゲームだと、パラレルワールドの全てをベストエンドにできるけど、1つのルートを追い続ける小説ではあり得ない。時々ゲームのような小説を作りたいと思うのですが、実際やろうとするととても大変です。

――学生時代の武田さんのように、小説家を目指して賞に投稿している人も多いと思います。書き続けるモチベーションの保ち方はありますか?

武田 結果を出すことと、続けることは別軸だと考えたほうが良いと思います。本を書くことが好きで、結果を求めていないのであれば、勝負にこだわらなくてもいいんです。ただ、誰かの評価が必要になったときには、戦略を考えなきゃいけない。それこそ受験と一緒ですね。モチベーションが保てなくなるということは、たぶん戦略が上手くいっていないから、戦略を練り直したほうがいいかもしれません。努力することは素晴らしいことですが、努力と結果って別のベクトルなんです。結果が自分の戦略に合っているか何度もトライ&エラーを繰り返して、「これはいけるぞ」と思ったものに全力を注ぐことが大事だと思います。

――今後新たに書いてみたいものや挑戦したいことはありますか?

武田 音楽を題材にしたものを書いてみたいと思っています。『響け!ユーフォニアム』シリーズは吹奏楽部の話でしたが、音楽は他にもたくさんあります。ジェニーハイやtricotなどのバンド音楽を好きでよく聴くので、バンドものも面白いかもしれませんね。

――最後に、これから進路の選択を控えるティーンにメッセージをお願いします。

武田 進路については、高校時代の先生からの教えがずっと胸に刺さっています。「自分がどういう環境に身を置きたいのかを考えて進路を決めなさい」といつも言われていました。どういう人と一緒に勉強したいか、どういう人と一緒に過ごしたいか。偏差値の高い大学へ行って、そこで出会う人たちと一緒にやりたいことがあるのなら、浪人してでもその大学へ行ったほうが良いけれど、やりたいことが別の場所でもできるならば、そこにこだわる必要はないと思います。後悔するときって、だいたい対人関係が一番大きいです。だから、どういう人たちと一緒にいたいかを考えて選択することが大切だと思っています。今、私の周りの環境には作家さんや編集さんがたくさんいて、本や映画やゲームの話で盛り上がることができる。それがすごく貴重で嬉しいことだと思うんです。どういう系統の人たちと、これから先一緒に仕事をしていきたいかを考えて進路を選んでみるのも良いのではないでしょうか。

Information

『世界が青くなったら』
好評発売中

著者:武田綾乃
出版社:文藝春秋
価格:1760円(税込)

公式サイト

武田綾乃

作家

1992年生まれ。京都府宇治市出身。2012年、同志社大学文学部在学時に執筆した『今日、きみと息をする』で第8回日本ラブストーリー大賞の最終選考候補作に選出される。同作が「隠し玉作品」として2013年に宝島社文庫として出版。吹奏楽部を題材とした『響け!ユーフォニアム』シリーズは若い世代を中心に大きな反響を呼びコミカライズ、テレビアニメ化など幅広くされた。2019年『その日、朱音は空を飛んだ』で第40回吉川英治文学新人賞候補、2020年『愛されなくても別に』で第37回織田作之助賞候補となる。2021年、同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。

Photographer:Tomoaki Isahai,Interviewer:Yukina Ohtani