高校時代に出会った戯曲で書くことに目覚める

――キャリアについてお伺いします。小説を書き始められる以前に、脚本を書かれていたそうですね。

古川 脚本は高校生のときに初めて書きました。新入生の部活の説明会に行ったら、演劇部の部長に勧誘されて、勢いで頷いてしまって。ものすごく人数の少ない部だったので、1年生の秋には僕が演出も担当するようになっていました。だけど、演出をするための台本も当然ないので、地元の一番大きな図書館へ行って戯曲の棚を端から全部読んでいったんです。

――戯曲は古川さんにとって魅力的でしたか?

古川 戯曲には、見たことのない言葉がたくさんあってびっくりしました。学校の教科書にももちろん載っていないし、自分の世代が読むような小説とも全く違う。想像力が爆発しているような言葉に「なんなんだこれは!」と思って、2年生のときには自分でも書いてみたくなったんです。それから本格的に部員を集めて脚本を書いて、演出もして、東北大会まで勝ち上がりました。そのときに初めて、書くってこういうことなんだ、と思いました。

――上京されてからも演劇を続けられていたそうですが、高校時代から将来的に商業演劇をやろうと考えていらっしゃったんですか?

古川 考えてはいましたが、甘かったですね。高校生が「君はすごい」と褒められて、その気持ちのまま東京へ出てきてしまった。どんなジャンルでもあることですが、「俺はできるんだ!」という気持ちでやっているから謙虚さが足りないんです。以前とは違った環境で、本気になって人を集めて、きちんと戯曲を書くためには、どうしたらいいのか学ばなきゃいけなかったのに、ただやろうとしていた。しばらく演劇を続けたあと、今の演劇的な環境の中では、自分の頭の中にあるものを完全に実現できないと思って、小説を書き始めました。小説は紙とペンさえあれば、身体ひとつでやれる表現活動ですから。

――小説を書くのは戯曲を書くのとは違う感覚でしたか?

古川 戯曲というのは、二人の人間がいて、一方がしゃべったら相手もしゃべればいいですが、小説はそうはいきません。たとえば「今日は取材があった。」と書いたとして、いきなり次の行には移れない。その後に「それはこういう媒体であって、」と必死に縦に繋げていかなければなりません。次々に横に文章がくる戯曲と違って、小説は縦です。ネットの文章も横書きだからこそみんなポンポン書けているのだと思います。縦書きの原稿用紙を渡したら突然書けなくなるはずです。