何かの繋がりで新しい世界が広がる

――小説以外にも朗読や戯曲の執筆など幅広く活動されています。多岐にわたって活動を続けるエネルギーはどこからくるのでしょうか?

古川 何かをやりたいと思って僕が突拍子もないことを言い出すと、たいてい「じゃあやろうか」って周りの人たちが集まってきて動いてくれるんです。資料に囲まれて一人で小説を書くのが本業だから、みんなで何かをやる喜びを常に自分の人生に置いておきたいという気持ちがあるのかもしれません。朗読も、そこに聴衆がいるということが大事なんです。

――朗読劇『銀河鉄道の夜』も、年々反響が変わっていますか?

古川 もともと東日本大震災絡みで始めたものですが、それからだんだん震災が遠い出来事に変わってきて、ただ一つの表現として観る人たちも増えてきました。昨年制作した映像作品『コロナ時代の銀河』に英語字幕や仏字字幕が付いて、細かい意味が分からないまま丸ごと受け止める人たちが出てきたのは良いことだと思っています。当時を知らない人たちにも届くものであってほしいですね。

――最近では古川さんが現代語訳をされた『平家物語』(河出書房新社)を底本としたテレビアニメ『平家物語』(フジテレビ+Ultra)が放送されました。

古川 僕は『曼陀羅華X』で聾者を扱った関係で、山田尚子監督の『映画 聲の形』を観てとても感動していたんです。その後に『平家物語』のアニメの企画が来てスタッフリストを見たら、まさに『映画 聲の形』のスタッフと同じ方々の名前が載っていてすごく驚きました。『平家物語』も美しいかたちになってとてもうれしいです。何かの繋がりで新しい世界が広がるというのは良いことだな、と改めて思いました。

――今後さらに挑戦されたいことや、書いてみたいものはありますか?

古川 コロナ禍を通して「僕らって何なのか?」ということを、そろそろ自分なりにまとめていきたいと思っています。コロナに対して今どうするか、ということは現在も多くの人が考えていることだと思います。僕は小説家なので、もっと長いスパンで考えていきたいです。感染症というのは人や動物の歴史と一緒に続いていますし、具体的には人が家畜を作ったところから生まれてきています。僕らが生きているから、こんなことが起こったんだということを受け止めて、それから何をするのかを考えていきたいです。

Information

『曼陀羅華X』
好評発売中!

著者:古川日出男
出版社:新潮社
価格:3300円(税別)

1995年、地下鉄にサリンが撒かれ、教祖が逮捕される。だが、教団は公判直後に教祖を奪還、後の歴史は軋みながら軌道を変えた。「予言書」としてその筋書きを書いたのは、教団に拉致され姿を消した作家X。だがそこには、復讐というもう一つのシナリオが埋め込まれていた。魂が共鳴する、当代随一の琵琶法師的現代文学。

公式サイト

古川日出男

作家

1966年7月11日生まれ。福島県出身。早稲田大学文学部中退。1998年、長編小説『13』でデビュー。2001年に4作目となる『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞をダブル受賞。『LOVE』で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』で野間文芸新人賞と読売文学賞をダブル受賞。2016年刊行の池澤夏樹=個人編集「日本文学全集」第9巻『平家物語』の現代語訳を手掛けた。その他の代表作に『沈黙』、『ベルカ、吠えないのか?』、『聖家族』、『南無ロックンロール二十一部経』、『木木木木木木 おおきな森』、『ゼロエフ』(ノンフィクション)などがある。2011年の東日本大震災の後、自ら脚本、演出を手掛ける朗読劇「銀河鉄道の夜」の上演を各地で行っている。

Photographer:Masahiko Matsuzawa,Interviewer:Yukina Ohtani