松坂桃李と樹木希林の不思議な縁

役者のパーソナリティに触れるという趣向で、映画のテーマと掛けて「宿命の相手は?」という質問が設けられて、登壇者たちはそれぞれフリップに答えを書き込んでいった。

まずは宿命の相手を「自分」と答えた横浜。「質問が難しくて、最初は『いない』と答えようかと思った」と前置きしつつ、「常に自分という存在がいるわけで、どうしても生きているかぎり、自分と向き合わないといけない。昨日の自分には絶対に負けたくない」と真面目に語る。

また多部も「もうひとりの私」と、横浜と非常に近い答えを提出。「年齢を重ねると自分で自分の悪いところが分かってきて。いけないと思いつつも、もうひとりの自分が出てきて、心の中で葛藤を繰り広げてしまう」と説明。

松坂は2012年公開の初主演作『ツナグ』で祖母役として出演した「樹木希林」の名前を挙げる。「まだ役者を始めたばかりなので、現場では希林さんから芝居のことはもちろんのこと、人として大事なことも教えていただきました。映画が撮り終わってからも、希林さんが番宣に全部付いてきてくれたんですよね」と、知られざるエピソードを披露。共演者という域を超えて、松坂にとって樹木希林がいかに大きな存在だったのかを語る。

番宣の際も「話す前に『ああ』とか『ええ』とか言わないの」など具体的にアドバイスもしてくれて、役者としてのスタンスに影響を受けたという。

さらに本作で樹木希林の娘である内田也哉子が文の母親役にキャスティングされて、「不思議な縁を感じてゾクっとしました」と胸の内を明かす。「だから、この映画での母親とのシーンは、僕の中で何とも言えない感情が巻き起こりました。希林さんがこの映画を観たら何と言うんだろう」と思いを馳せた。

広瀬は「姉」とフリップに書き、広瀬アリスだと答えた。「姉妹であり、友だちであり、同業者でもあるんですけど、一緒に過ごした時間が短くて、いつも『この関係は何だろう?』と思っている」と、実の姉との不思議な距離感を素直に打ち明ける。そして「客観的に言えば姉と妹だけど、言葉では言い表せない、切っても切れない関係」と答えた。

最後に作品を代表して主演の広瀬と松坂の2人の言葉でイベントが締めくくられた。

松坂は「普段の舞台挨拶では高揚感があっても緊張感はないんですけど、今回はすごく緊張していて、この作品が皆さんの目にどのように映るのか怖いです」と素直に気持ちを明かす。「けれど、しっかりと観ていただきたいという気持ちのほうが大きく、言葉にしにくい内容かもしれませんが、ご覧になられた方は感想をSNSで伝えていただければ」と訴えた。

広瀬も「ご覧になられた方がこの作品に共感してくれるどうか。一人ひとりの感想は違うかもしれませんが」と述べつつ、「もう一度、李監督の作品に出演できたことはすごく光栄なことであり、この映画の中で更紗として生きた時間は私にとって何よりも幸せでした」と喜びをあらわにした。そして、「お腹の中のマグマを吐き出しながら一生懸命作った映画なので、ぜひ一人でも多くの方に届いたら嬉しいです」と期待を込めて、イベントを無事に締めた。

Information

『流浪の月』
2022年5月13日(金)全国ロードショー!

監督・脚本:李相日

出演:広瀬すず 松坂桃李
横浜流星 多部未華子
趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 / 柄本明

作:凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社刊)
撮影監督:ホン・ギョンピョ
製作総指揮:宇野康秀

🄫 2022「流浪の月」製作委員会

雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。引き取られている伯母の家に帰りたがらない更紗の意を汲み、部屋に入れてくれた文のもとで、更紗はそのまま2か月を過ごすことになる。が、ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。それから15年後。“傷物にされた被害女児”とその“加害者”という烙印を背負ったまま、更紗と文は再会する。しかし、更紗のそばには婚約者の亮がいた。一方、文のかたわらにもひとりの女性・谷が寄り添っていて……。

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