若い頃は転職も容易なので無理に考える必要はない

――講演会の依頼は、どういうきっかけで始まったのでしょうか?

倉田 かつてビジネス系雑誌の連載を持っていたので、それを見た経営者の方や法人会などのグループの方が依頼してくれるようになったのがきっかけです。

――話すこと自体は学生時代から得意でしたか?

倉田 話が上手いと言われたことはありませんが、話すこと自体は好きです。ただ分かりやすさを意識するようになったのは芸人になってからですね。芸人にとって分かりやすさはめっちゃ大事です。芸人の話は分かりやすくて短いから、テレビでもいろんなものを紹介できるんだと思います。

――講演会で話すためのスキルはどのように磨きましたか?

倉田 講演会に何度も呼んでもらえたタイミングで話し方を含め、もっとこうしなければいけないと意識するようになりました。講演会は内容をすべて用意していかなければいけないのが大変なんです。2人なら掛け合いというか、話しながら見世物として成立しますが、ずっと一人で1時間も話すので難しいんですよね。

――芸人として培ったものは活きていますか?

倉田 めちゃくちゃ活きていると思います。他の人の講演も見に行きますが、よほどの人でないかぎり、一般の人のしゃべりを1時間聞くのはきついです。みんなが知っているような会社の経営者でも下手な人は下手で、聞いてられなかったりします。

――話の上手い人は何が違うのでしょうか?

倉田 話の上手い経営者は著書に書いていることを話していることが多いです。すでに自分の中でまとまっていることを何度も話していると、情報として洗練されていきますし、無駄がありません。大抵の経営者の人は、思っていることについて適当にしゃべりがちで、練習していないから下手なんですよね。よほどその人に興味がある人でないかぎり、そういう話を1時間、一方的に聞くのは厳しいです。質問を受けながらということであれば楽しくていいのですが、そうではないと、かなりのスキルが必要ですね。僕も1時間の講演会なら約10回と、講演会の前はむちゃくちゃ練習します。

――間の取り方などは意識されますか?

倉田 笑いを取る訳ではないので、それほど意識しなくてもダラっとしていると思われないように、とにかく情報を詰めこんでいけば大丈夫です。

――最後に進路選択を控える読者にメッセージをお願いします。

倉田 若い頃は転職も容易なので、無理に考える必要はないと思います。やりたいことがある人はやりたいことを、好きなものがある人は好きなものを仕事にするといいですよ。

Information

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さんきゅう倉田

芸人・ファイナンシャルプランナー

1985年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、国税専門官試験を受けて東京国税局に入庁。中小法人を対象に法人税や消費税、源泉所得税、印紙税の調査を行ったのち、同局退職。吉本興業の養成所NSCに入学し、芸人となる。当初、アルバイトで生計を立てていたが、Twitterでの税やお金に関する情報が話題を呼び、執筆や講演、メディアへの出演依頼が増加。退職した東京国税局からも租税教室や動画作成依頼を受ける。「知名度」と「コミュニケーション能力」を活かして、多数の経営者や個人事業者、会社員から聞いた情報を、芸人として鍛えた「トーク力」及び「表現力」と融合させ、税理士会、法人会、商工会、医師会、保険会社、労働組合、各種学校、中小企業などで5000人以上に講演を行う。東京国税局退職後も独学で税と経済を学び、『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『ダイヤモンド・オンライン』『プレジデントオンライン』『マイナビニュース』『税と経営』などで執筆。独自の視点と平易な表現で好評を博す。

Photographer:Masahiko Matsuzawa,Interviewer:Takahiro Iguchi