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特別講義のテーマは、ズバリ「夢」

EXILEや三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEなどが所属するLDHは、パフォーマンス集団であると同時にダンス教育にも力を入れている。ダンススクール・EXPG STUDIOは多くの有名アーティストを輩出しており、ダンス教育番組『Eダンスアカデミー』(NHK Eテレ)では子どもたちを相手にダンスの楽しさを啓蒙してきた。そして昨年から始まったEXPG高等学院は「ダンスを学びながら高校卒業資格も取得できる」という画期的なスタイルの学校だ。

2021年度の新入生は130名。東京校、名古屋校、大阪校、福岡校の4校でレッスンや講義を受けることになる。「ダンスに関わる仕事をしたい」とビジョンを明確にする生徒もいれば、「EXPG高等学院の中で目標を見つけていきたい」と考える生徒もいるが、夢に向かって全力で駆け抜けようとする希望に満ちた想いは全員に共通しているようだ。

今回、学長・EXILE TETSUYAさんとゲスト講師・中務裕太さんによって行われた特別講義のテーマは、ズバリ「夢」。二人はパワーポイントを駆使しつつ、自身の経験も踏まえながら画面越しの生徒たちに語りかけていく。校舎ごとに集められた生徒たちの眼差しは真剣そのもので、聞き逃さないように必死でメモを取る姿も目立った。

そもそも夢とは何か?


「2期生のみなさん、EXPG高等学院へようこそ!」

授業冒頭、EXILE TETSUYAさんの掛け声に合わせ、中務裕太さんが拍手で130名の入学を祝福する。EXILE TETSUYAさんは「LDHのアーティストやスタッフは夢を大切にしています」と切り出すと、「では、そのために何をどう頑張ればいいのか? そこが永遠のテーマになってくる」と解説。そしてモニター上に「ダンスでお金を稼ぐ」「J SOUL BROTHERS」「EXILE」「EXILE THE SECOND」「DANCE EARTH」「EPI QUALITY」「俳優」「AMAZING COFFEE」「早稲田大学院」「教科書を作る」「書籍出版」「EXPG高等学院」といった文字が箇条書きで写され、「僕の場合、これだけの夢を叶えてきました」と胸を張った。

一方の中務裕太さんは「ワールドツアー」「5大ドームツアー」といった夢のほかにも「初任給で家族に食事ご馳走」「憧れの芸人さんに会い、一緒に仕事をする」といった夢を実現させてきたと述懐。ダンスだけが夢ではないことを強調していた。

「では、そもそも夢とは何か?」

こう問いかけられた生徒たちは、自分の考えを述べていく。「夢とは無制限にあるもの」「僕の夢はLDHのアーティストになり、ドームで自分のダンスをお客さんに見てもらうこと」……。こうした意見を聞きながらEXILE TETSUYAさんも「そう、夢とは〇〇になりたいという欲求のことなんです」という大きく頷いた。

ここでEXILE TETSUYAさんはマズローの欲求5段階説(※アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した説)を噛み砕きながら説明。「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」をクリアしていった人が夢の実現に近づけると力説。

「そして夢を実現するためには、社会が平和であることがなによりも大事。コロナ禍の現在、今まで当たり前とされてきた日常が脅かされています。LDHも昨年だけで全168公演が中止になりました。これによって関連業務などを含めると約10万人分の仕事がなくなりました。レディー・ガガさんが呼びかけたコロナ支援コンサートは僕も感動しましたが、みなさんも平和を願う気持ちは忘れないでいてほしいです」(EXILE TETSUYAさん)

その後も二人による熱のこもった講義は続く。生徒たちも「自分のパフォーマンスで人の心を動かせるようになれば」「E-girlsさんのように可愛いけどカッコいいアーティストになりたい」「インストラクターになって、ダンスの楽しさを伝えていきたい」「小さい頃にE-girlsさんを歌番組で見て、自分もこうなりたいと思うようになった」とそれぞれの夢を存分に語っていた。

2人からはレポート提出のお達しも。それは「自分の夢を書き出す(複数可)」「その夢を叶えるために今日できることを書き出す」という内容で、モニターの向こう側の生徒たちも表情を引き締めていた様子だった。

授業の最後は、生徒130人と講師二人が一斉になって『Eダンスアカデミー』のテーマソング『HELLO! HALO!』をダンス!オンライン授業ながら実際に体を動かすことで、自然と生徒たちも笑顔になっていく。

「これから3年間、みなさんはダンスレッスンと勉強と提出物に追われる日々を迎えると思います。ダンスも大事ですけど、勉強も絶対おろそかにしないでください。それでは、またお会いしましょう!」

EXILE TETSUYAさんが熱く呼びかけると各校の生徒は大きな拍手で応え、90分にわたる授業は終わりを告げた。

講義終了後に二人にインタビュー

授業を終えたばかりの二人をキャッチ。EXPG高等学院に懸ける想いを伺った。

──非常に興味深い授業でした。ダンスを生徒に教えるという行為は、英語や日本史といった一般的な座学に比べてもオンラインに向いていないようなイメージを持っていたのですが、そのあたりで苦労や戸惑いはありませんでしたか?

EXILE TETSUYA(以下、TETSUYA) たしかに最初のうちは手探り状態でした。オンラインだと、どうしても音と映像の間に若干のギャップが生じます。一方で気づかなかったプラスの面もあって、たとえばスケジュールの調整が組みやすくなりました。通信環境さえあれば全校生徒が一斉に集まることができるから、僕らみたいな立場としてはすごくありがたいです。

──メリットも大きかったということですね。

TETSUYA むしろメリットのほうが大きかったと思います。ただ忘れてはいけない大事な要素があって、オンラインで授業をしていても、各校には対面で対応してくれる専門のインストラクターが生徒のすぐそばにいることです。そういうきめ細かいフォローがあるからこそ、成立している部分があります。

──中務さんはいかがでしょうか?

中務裕太(以下、中務) そもそも僕、しゃべること自体は苦手な方です(苦笑)。だけど目の前にリアルな相手がいたら、なんとなく雰囲気で伝えられることってあるんですよ。これがオンラインとなると、はっきり言語化しないと相手には伝わらない。ある意味、そこは自分にとっても勉強になっている部分はあります。自分の頭の中を改めて整理しているというか。

──なるほど。その場の雰囲気でごまかせないですよね。

中務 ダンスにおけるオンライン授業の弱点があるとすれば、細かい動きのニュアンスなどを指導できないことです。もし直接向き合っていたら修正できるようなことも、画面上だとわかりづらいです。正直、もどかしいところでもありますが、TETSUYAさんがおっしゃったようにメリットとデメリットを比較したらメリットのほうが圧倒的に大きいのも事実。なので、今はこの枠組みの中でベストな道を模索しているところです。

TETSUYA オンラインでのダンス授業。そこにジレンマを感じることも当然あります。だけど今はYouTubeやTikTokなど動画でダンスを覚える層が確実に増えているし、僕自身も可能性を感じています。

──EXPG STUDIOでは即戦力で活躍するような未来のスターを育成していますし、『Eダンスアカデミー』では小学生の子どもたちを相手に教えています。EXPG高等学院の生徒相手には、どのあたりに力点を置いていますか?

TETSUYA そこは違いが如実に出ます。子どもたちが相手だと、言葉なんて関係なく実際にやって見せたほうが早かったりします。あるいは「花が一気に咲くような感じで」といった調子でニュアンスを伝えることも多いです。これがEXPG STUDIOの生徒相手になると、プロフェッショナルなスキルや人間性、あるいはLDHの理念を教えることが大事です。大きな違いとしては高校教育のカリキュラムと結びついているという点です。パワーポイントを事前に用意して、質疑応答のタイミングもあらかじめシミュレーションしてたり、どういうやり方で進めたら、生徒のみなさんがメモを取りやすいのか。そういう流れって普通のダンススクールじゃ、まず考えないですから。LDHにとっても新しいことをやっているのは間違いないです。僕自身が大学院で学んでいたので、その経験は確実に活かされています。

──EXPG STUDIOとEXPG高等学院を比べると、よりプロ志向が強い若者がSTUDIO集まるというイメージですか?

TETSUYA 結果的にそういう側面もあるかもしれませんが、STUDIOのほうが上位概念ということではありません。高等学院の生徒にはヘアメイクだったりトレーナー志望だったりと裏方志向の子も大勢いてキャリアの幅が広いかもしれません。

中務 僕はキッズ相手に教えることもあるのですが、そのときはとにかくダンスの楽しさを伝えようとしています。しかし高校生相手だと、ただ楽しいだけでは授業になりません。進路にも関わってくる話ですし、ときには厳しいアドバイスを送ることもあります。

──お二人は現役のパフォーマーでもありますが、生徒に教えることで自身の表現に変化はありますか?

TETSUYA 確実に変わります。自分の言葉によって生徒たちが頑張っている姿を見ると、一種の責任感が生まれます。生徒たちに教えた言葉が嘘になってはいけない。そのことを意識しつつ、ステージで踊っている部分もあります。ましてや僕の場合は「学長」という肩書もついているので、生半可なことはできません。

中務 生徒たちは「夢を叶えたい!」と本当にまっすぐな気持ちでいます。彼ら、彼女らのよき見本にならなくてはいけないなと強く感じますし、自分ができることは積極的にサポートしていきたいです。

EXPG高等学院

2020年4月開校。EXPG STUDIOと学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校が提携して運営。ダンスを本格的に学びながら高校卒業資格を取得することができる新しいスタイルのスクール。アーティストやダンサーはもちろんのこと、より多くの生徒に、機会と選択肢を与えることができるスクールを目指している。

Text: Mamoru Onoda