読み手の自由を奪うような現代文の試験に疑問を感じていた
――新刊『こんな人いるよねぇ~』は、ジャンルの違う27冊の本を取り上げて、読んで感じたことを率直に、大幅に本の内容から脱線しながらコミカルに綴っています。本のセレクトは編集部が行ったそうですね。
つぶやきシロー 最初の打ち合わせで、僕から「こういう本がいいですね」と伝えたのに、送られてきたのは全然興味のない本ばかり(笑)。まあ僕が本を読まなすぎるから、ジャンルが狭かったんですよね。それを「こんな本もあるんですよ」ってことで、いろんなジャンルの本を送ってくれて、視野を広げてくれたことはありがたいです。読んでみたら、「こういうところがツッコめるな」って発見も多かったです。
――学生時代から読書はしないほうだったんですか?
つぶやきシロー 親って「頭がいい人はみんな本を読んでるんだから読みなさい」って言うじゃないですか。だから逆に読まなかったというか。別に反抗してた訳じゃないんですけど、親は「読め」って言ってくるくせに、もともと家に本なんてなかったし、「あんたらも読んでいないじゃん」と。そういう環境で本なんて読まないですよね。活字も苦手だし、読むのも遅いし、現代文のテストなんて、例文を読むだけで時間が終わってましたよ。それに「作者はどう思ったでしょう?」とか、知ったこっちゃないんですよ。読み手の自由な訳じゃないですか。答えなんかあるはずがない。だから現代文の試験は、ずっと疑問でした。
――『こんな人いるよねぇ~』は普通の読書案内とは違った視点で、取り上げた本に対して重箱の隅をつつくようにツッコミを入れていくスタイルが新鮮でした。
つぶやきシロー 本の中にあった1個の記述をきっかけに、勝手に怒り狂っているというね(笑)。怒りのきっかけが欲しいだけだから、著者には申し訳ない気持ちもあります。
――取り上げている本はノンフィクションの新書や自己啓発本が中心で、小説は1冊もないですよね。
つぶやきシロー 送られてきた本の中から興味があるものを選んでいたら、そうなったんですけど、小説の感想は書きづらいんですよ。小説が読めるようになったらいいなという気持ちもあるんですけど、途中で読めなくなって、1冊もたないんです。
――今回取り上げた中で、ティーンにおススメの本を教えてください。
つぶやきシロー 『友だち幻想』(菅野仁/筑摩書房)なんていいんじゃないですか。まあティーンのうちは「友だちなんて幻想だ」なんて思わないほうがいいかもしれないけど、どうせ年を取ると友だちなんて離れていきます。僕の年になったら、もう切っていく作業ですから、2年も連絡しない相手は携帯から消します。友だちと服は2年着なかったら捨てていくんです。
――2年くらい連絡しない友だちは珍しくない気もしますが(笑)。
つぶやきシロー 本当に必要な相手なら、今の時代はどうにでも連絡が取れるから、それぐらいの覚悟でいいんじゃないのって思っちゃう。携帯の中にいっぱいメモリーできちゃうのも良くないよね。結局ストックしているだけだもん。ストックされていると、「もしかして連絡があるかも……」と心のどこかで期待しちゃうし、何かする時に思い切って前に行けないんですよ。
――若い頃って友だちの数が多いほうがいいって考えがちですからね。
つぶやきシロー それって滑り止めみたいなものなんですよ。自分が何かあった時のために、都合のいい友だちを置いておきたいだけ。自分に甘いということですよ。人にはその時々の顔があって、その時々の友だちでしかないんです。大学の友だちと、バイト先の友だちでは、自分も違う顔をしている訳じゃないですか。そういう意味で僕も、友だちは全て幻想だと思っているんですよね。いくら今は仲が良くても、お金なんかが絡むと関係性は狂っちゃうし、心から信じない方がいい。ちょっとした一言で、絶交にも繋がるじゃないですか。特に文章なんて勘違いされやすいから、メールひとつで思っていることと違う風に伝わって、関係が悪くなることもありますしね。
――面と向かって言えば、たいしたことのない言葉でも、メールだと強い調子になることもありますからね。
つぶやきシロー そうそう。会って表情を見るとか、電話でも言い方とかで伝わることでも、文字だけだとミスが起きるし、それで絶交した人もいると思います。そういうことも含めて、友だちは幻想なんです。これだけAIだなんだって時代に、せめて人同士が繋がらなくちゃって言われている中、「つぶやきシローは何を言ってるんだ」と笑われちゃうかもしれません。ただ「こういう変なおじさんいるんだね」と思いつつも、もしも興味があったら、『こんな人いるよねぇ~』を手に取って、そこで取り上げている本も読んでほしいですね。