初めて出演したお笑いライブの新人コーナーで優勝
――ホリプロ所属になったのは23歳の時だったそうですが、かなり早い段階で売れっ子になりましたよね。
つぶやきシロー 初めて人前に出たのが漫談だったんですけど、それも自分から始めた訳じゃなくて、ネタ見せに行ったときに「他にやっている人がいないから、漫談だったらライブに出してあげるよ」と言われたからなんです。それで急遽あるあるネタで漫談を作って、ホリプロ主催のお笑いライブの新人コーナーに出たら、いきなり1回目で優勝しちゃった。そしたら当時のチーフマネージャーが、「あんな面白くない奴が1回優勝しただけで、1本ネタに出られるのはおかしい。2回合格しないとダメ」と僕のせいでルール改正になっちゃったんです。ずいぶん、みんなに恨まれましたよ。ところが翌月の新人コーナーに出たら、2回目も僕が優勝して、1本ネタでも出られるようになって。そしたら、とんとん拍子でテレビにも出られるようになったんです。事務所に所属して半年後ぐらいでしたね。
――たった半年で!
つぶやきシロー だから本当に何も分かってない状態でした。当時はかっこつけてたから訛りもバレないようにしていましたし、バカにされないように必死でした。現場にマネージャーは来ないし、カメラテストや前説もやったことがないし、誰からもテレビについて教わっていないし、そりゃ大変でしたよ。ところが、その年の11月にはホリプロのライブでトリを任されたんです。
――ものすごいスピード感で人気者になっていったんですね。
つぶやきシロー 僕は不器用だから、何をするにも人より遅い。そんな自分をよく分かっていましたから、たとえ成功するにしても大器晩成型だと思っていました。だから、そのスピード感についていけなかったです。それでいて僕は完璧主義で、クソ真面目なところがある。テレビに出られるようになったとはいえ、周りを見たらすごい人たちばかりで、まったく実力が追い付いていない。ちゃんとしなきゃと思っても、自分ではどうにもできない。もしかすると売れている期間が短かったのは、逆に良かったのかもしれません。
――ブレイク中も客観的に自分のことを見ていたんですね。早く世に名前が出たことで良かったことはありますか?
つぶやきシロー たった1年間だけでも名前が出たから、「ああ、昔売れた人ね」と言われようが、今も知ってくれている人が多いことです。これを読んでいる十代の子たちは知らなくても、もしかしたらお父さん、お母さんは知ってくれているかもしれない。最近は見ないけど、一応つぶやきシローという名前は残っていて、まだこの世界にいさせてもらえているのはありがたいですよね。やっぱり顔と名前を売るのって大変ですから。ましてや芸能界は入れ替わりが激しいから、売れている人なんて、ごく一部だけなんですよ。
――ナレーションの仕事は長年にわたってコンスタントにやられていますよね。
つぶやきシロー 僕はナレーションの仕事が好きなんですよ。上手いか下手かは分からないですけど、あの空間(ナレーションブース)で、1人で戦う感じがいいんです。番組にもよりますけど、決まった秒数の中で言葉を埋めるとか、「つぶやきさんらしく、何か付け足して面白くしてください」と任されるとか、自分なりの戦いができるのが好きなんですよね。2時間の特番なんかだと、スタッフさんから「休憩しましょうか?」って心配されるんですけど、一気にできちゃうんですよ。根が引きこもりなんでしょうね。
――「マツコ会議」でも、今後は前に出る仕事より、ナレーターに力を入れていきたいとおっしゃっていましたよね。
つぶやきシロー そうですね。あと今回みたいに文章を書くことにも、どんどん挑戦していきたいです。
――最後に改めて、ティーンに向けて『こんな人いるよねぇ~』の注目ポイントをお聞かせください。
つぶやきシロー 正直、この本を読んで本を好きになる人はいないと思います。本を紹介しているようで紹介していない。だから、ブックガイドというよりもコラムを読むような感覚で、「こういう偏った考え方をしている人がいるんだな」と感じつつ、共感もできると思うので、コンビニに置いてある本みたいに気軽に読んでみてください。
Information
『こんな人いるよねぇ~』
好評発売中!
著者:つぶやきシロー
絵:伊藤ハムスター
定価:1,430円(税込)
発行:自由国民社
つぶやきシローさんが、いろんな本を読んでの感想文を1冊にまとめました。読書案内の形式をとっていますが、取り上げた本やその解説には、身近によくいる“困った人”“苦手な人”“いい人を演じる人”“理不尽な目にあっている人”“マイペースな人”“被害妄想にとりつかれている人”……などが多種多様に登場します。その中から、読者のみなさんも「ああ……こんな人いるよねぇ」「自分もそういうことあるある!」と思うであろう人物やシチュエーションに焦点をあてて、ご紹介しています。
