半分背負う石井君の人生。だから全力で受け止める

――そんなお二人がNSCで出会うわけですね。

石井 NSC時代はお互い喋ったこともありませんでした。NSC卒業後、僕がコンビを解散したときに安田くんに連絡したんですけど、それも人づて。共通の知り合いから連絡先を聞いて呼び出しました。当時の安田君は、ロン毛で、背も高くて、人気もめっちゃあって。「めっちゃ格好いい人おる」って思ったんですよ。今はこんな感じですけど。

安田 いやいやいや(笑)。

石井 僕も身長的には同じぐらいやし、二人ともスラっとしているから、見栄えもいいかなと思って声をかけました。

――安田さんは、石井さんに声をかけられて、いかがでしたか?

安田 NSCのときは別々のコンビでしゃべることもなかったんですが、なんとなくその時から、当時組んでいた相方と解散したら石井くんと組みたいなっていう気持ちはありました。解散したのは僕が先だったと思いますが、一人でフラフラしていたときに、ある日知らん番号からかかってきた電話が石井くんだった。次の日にマクドナルド行ったんですが、何を言われるかもわかってたのに、「なになに?」みたいな素知らぬ風の感じ出して。まさに「告白」をうけるみたいな感じでしたね。自分でもめっちゃ恥ずかしいんですけど、変な空気にしたくない一心で、そのとき石井くんが持ってきてたカバンというか袋をさして、「あ、それ俺にくれるやつ?」みたいな、変なボケしたんですよ。それで「ちゃうわ」みたいな感じになったことは覚えてますね。まさに「ファーストボケ」です。

石井 覚えてない。そんなんあったかな?

――20歳をすぎてからコンビを組んだお二人ですが、めざす方向性などでぶつかることはありますか?

石井 ぶつかるという感じでないですね。僕が勝手にちょっと怒っていて、それを伝えたりすると、安田君は「俺はこう思うけど、そういう風に思ってたんや。でも石井くんがそう思ってるんやったら、申し訳ないな」みたいな感じですね。

安田 僕の人生にも、もちろん怒りはあります。でも、石井くんの人生を半分背負ってる以上、したいことができる方が絶対にいい。だから自分の気持ちよりも石井君が強く伝えてきてくれたことを受け入れないと、という感じですね。

――お二人はかなり早い段階からYouTubeを始められましたね。

安田 最初はネタやトークを上げようか、ぐらいの感じで始めました。場合によりますが、今は毎日1つテーマを決めて、アドリブで喋っていって、新ネタライブに向けて修正しながら仕上げて出す感じです。

石井 いろいろなことをやってみようかなと思っています。全部僕が作って安田くんに伝える、というかたちでずっと続けていたのですが、今は、二人で喋ってからまとめる感じにしていますね。ただ、YouTubeで稼ごうとはそれほど思っていないし、単純に劇場に足を運んでくれる人が一人でも増えればいいな、というだけで、そのためにわざわざ時間を作るという感覚ではないです。

――最後に、お笑いの世界を目指す十代の読者に向けてメッセージをお願いします。

石井 コンビとピンで違ってくると思いますが、コンビは相方がいろんなこと、例えばお互いのしたいこと、目指しているところをどうすり合わせるか、といったところをどれだけ分かってくれるか、じゃないですかね。「もうええわ」ってなったり、ケンカ別れしたりする人もいますが、僕の場合は安田くんが人格者なので。

安田 しゃべり喋りづらいな、このあと。

石井 僕はしたいようにさせてもらっているので、そういう人との巡り会いも大事です。自分じゃどうにもできないですからね。

安田 そんなこと1ミリもなくて、多分僕が気にしないだけというか、適当なんです。ただ、嫌な部分を見るより、「いいところがあるよね。ここすごいな、俺にはないな」という感じを出した方がいい気がします。

石井 なかなかできない!人格者しかできない!

安田 やめろ、そんなやつは芸人やってない(笑)

コマンダンテ

お笑い芸人

2008年7月結成。安田邦祐(やすだくにひろ・ボケ担当・1983年10月25日生まれ、大阪府門真市出身)と石井輝明(いしいてるあき・ツッコミ担当・1984年10月17日生まれ、大阪府大阪狭山市出身)によるお笑いコンビ。ともに大阪NSC29期生で、コンビ結成翌年の2009年には、M-1グランプリで初の準決勝進出を果たした。2016年、「漫才新人賞決定戦」(ytv)優勝。2017年から東京進出し、2022年3月からは人気ユニット「大宮セブン」の一員となり、活躍の場を広げている。今月31日(火)には、ルミネtheよしもとにてコマンダンテトークライブ「トークダンテ」を開催。

Photographer:Yu Tomono,Interviewer:Takahiro Iguchi