形になるまで続けてみようと思った
――初の著書『おもしろ漢字辞典~こんな漢じでどうですか?~』の企画はどのように始まったのでしょうか?
中村 「かまいたちの机上の空論城」という番組で、24時間で100ツイートして、Twitterをバズらせろというチャレンジ企画がありました。その企画で、この本の表紙になっている「風めっちゃ強い」とか、「漢字の片付け方」が目標の1万いいねを超えて、3万いいねに達するなど、めちゃくちゃバズって、番組的にも大成功やったんです。Twitter上の反響もすごくて、「ここで終わらすのはもったいないな」ということで、形になるまで続けてみようと思いました。それで企画が終わった後も自分でネタを考えて勝手にやっているというか、企画が続いている状態というか。それが今回の書籍化に繋がっていきました。
――そもそも漢字ネタを思いついたのは?
中村 5~6年前に漢字をいじるネタを舞台でやっていました。思いついたときは、「よっしゃ!いいのできた!」と思ったけれど、お客さんは声に出して笑うのではなく、感心してしまうような空気になったのでやめちゃったんです。でももう一回Twitterでやってみようと掘り起こしたらバズったので、Twitter向きのネタなんやなと。
――どのように漢字ネタを考えているのでしょうか?
中村 漢字自体が数えきれないほどある以上、無限に創作漢字を作れることに気付いてからは、喫茶店にこもって、常用漢字一覧を見ながらひたすら考えて、ネタ帳に書いていきました。新幹線など、外出先でもネタ帳を開いていたので、「こいつ何やってんねん」という目で見られていたと思います。でも考えていてすごく楽しくて、ほんまに夢中になれるというか、これ自分にめっちゃ合ってるんやろうなって。もちろん思いつかんときはしんどかったりするんですけど、普段やっている他のネタを考えるときよりも夢中になってできる。時間が経つのが早くて、何時間でも集中できるんですよね。
――ネタの面白さもさることながら、ヒューマン中村さんの個性的な文字のタッチも味わい深いです。
中村 全て自分の手書きなんですけど、あんまり字が上手いほうではなくて。この書籍用の字を書くために、同じ文字を何十回も書いていますし、小学校で漢字の書き取りの宿題をやっているような感覚で作っていました。表紙の文字なんて200以上書き直しましたからね。「もっと風強い感出したほうがいいんかな」「めくれている角度とかが違うんか?」など、何が正解かも分からなくなって、ゲシュタルト崩壊していきましたね。最終的には編集者の方に、「僕の中ではこれとこれとこれがまあまあ大丈夫かなと思います。あとは選んでください」と丸投げさせてもらいました。そういう意味でも表紙の風はいい感じになっていると思います。
――SNSを見ていると、若い世代からの反応も目立ちます。
中村 嬉しいですね。僕のことはあんまり知らんけど、リツイートで回ってきて、面白いと思ってフォローしてくれている人もすごくいて。「漢字ネタの人や」みたいな感じで、こういう知られ方もあるんだなと思いました。