教室での撮影シーンはすべての始まり

5月20日からhuluで独占配信された『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(全8話)。夢は必ずかなうと無邪気に信じ、がむしゃらに突っ走ることができた登場人物たちも今や27歳。誰に注目されることもなく日々を生きている姿を温かい目で描く。「ボクたちはみんな大人になれなかった」(新潮社)の作者、燃え殻の世界観に感銘を受けた萩原健太郎監督が、自ら「新たな作品を創ろう」と燃え殻にオファーし、完全オリジナル作品として映像化されるに至った。

当初は、どのような作品にするかという方向性が決まっていたわけでもなく、燃え殻とのやりとりを4~5年続けるなかで、輪郭ができていったと語る萩原監督。「自分の中でもすごく大切な作品で、ようやくこのようなかたちで皆さんに観ていただける日が来たことがすごく感慨深いです」と喜びを表現した。

登場人物たちの17歳から27歳を描くということで、ハードスケジュールの中でもひときわ長い時間を費やして撮影されたという教室での撮影シーンを「そこから全ての物語が始まっていました。一つの部屋というか空間ですが、それぞれ見えるものが違う」と振り返ったのは成田凌。作中では夢半ばで役者になることを諦め、サラリーマンとして生きる荻野智史を演じるが、現場ではひたすら、共演の藤原季節と「歌詞しりとり」で盛り上がっていたいうエピソードも。

それを横目に「ああ、高校時代って、こういう感じで男子が遊んでいたな。聞くともなく聞いてしまっている自分もいて、勝手に楽しんでいました」と語ったのは、伊藤沙莉。17歳らしく見せようと、「脚がぴちぴちに見えるように」ボディークリームを塗りまくって撮影に臨んでいたと話した。彼女が演じる前田ゆかはアイドル志望のため、作中でもオーディションを受けるシーンがあり、9歳から子役として活躍し、オーディション経験も豊富な伊藤だからこそできた提案があった。「オーディションで何よりつらいのは、きちんとアピールできない状態のまま自分の出番が終わってしまった後も、他の人の自己紹介から演技まで見ていなければならなかったことです」(伊藤)。その経験を活かし、自分の出番が終わったらすぐに帰宅するのではなく、つらい気持ちのままその場にいるという設定を提案、監督に採用されたという。

「僕は見た目が若いですから、特に17歳を演じるうえで苦労はなかったです」と笑わせ、撮影時には自前のメガネで臨んだと語るのは、小説家志望の片桐晃を演じた藤原季節。作中で、ひとめぼれした図書館の女性に「芥川賞を取るので付き合ってください」と仰天の告白をするのだが、成田に言わせれば、このセリフは藤原向きで「俳優でいうなら、アカデミー賞を取るから付き合ってくださいと言っているようなものでかなりダサい。でも、わけのわからない真っ直ぐさを持つ彼がいうと、はまってしまう」と語った。