やっていて苦にならないことを学生時代に見つける

──マキタスポーツさんも臼井圭次郎も紆余曲折がありましたが、若い世代に進路に関するアドバイスをお願いします。

マキタスポーツ 私の娘が大学3年生になって、そろそろ進路のことを考えなくちゃいけないんですよね。なので、ここは娘に話しかけるような調子でいきたいと思います(笑)。いや、でも実際、彼女を見ていると今の学生は大変だなと感じますよね。だってコロナのせいで、入学してからまったく登校していないんですよ?このままだと、大学の4年間を引きこもりみたいに過ごした状態で社会に放たれるのかもしれない。

──実際、途中で退学する大学生も非常に多いそうです。

マキタスポーツ 今の時代、大人たちに「大学へ行く理由をきちんと説明できますか?」と聞いたところで、満足に答えられるケースは少ないんじゃないかと思う。いい大学に入って、いい会社に入って、定年退職まで勤め上げて……なんていう幻想はとっくに崩壊している訳でね。かと思うと、社会に出たら「君にはどんなスキルがあるんだい?」っていきなりレベルが高いことを求められるんだから、よっぽど意識が高い人じゃないと何もできないってことになりかねない。

──なるほど。たしかにそういった側面はありますね。

マキタスポーツ これを読んでいる人の中に現役の大学生や専門学校生がいたら、まずは「仕事に役立つかどうか?」という視点を忘れて、やっていて苦にならないことを学生時代に見つけることじゃないかな。それは趣味でもいいんですよ。とにかく苦じゃないことじゃないと続かないですから。同じことを長く続けていく先にスキルが身につくという発想に変えていけば、自ずと可能性も広がっていくはず。取ってつけたように勉強して資格ホルダーになるという生き方もあるとは思うけど、「そんなことやって何になるの?」ということをやり続けるほうが面白くないですか?

──遠回りはするかもしれませんけどね。

マキタスポーツ 僕も振り返ってみると、25歳までに体験したことが後にすごく役立っているなと感じるんですね。若い頃に経験した葛藤、悩み、読んだ本、音楽……全部、自分の宝物ですよ。すべてが役に立っています。だから無駄に感じられたことも経験してよかったと今となっては思うし、10代や20代で熱量を費やした時間は確実に貯金になっているので。ありきたりの話かもだけど、若いうちはいっぱいいろんな仲間とつき合って、いっぱい本を読んだり、いっぱい音楽を聴いたり、いっぱいお笑いライブに行ったりしてほしいなと思いますね。

Information

『雌伏三十年』
好評発売中!

著者:マキタスポーツ
価格:1,870円(税込)
発行:文藝春秋

1988年、山梨から野望を抱いて上京した臼井圭次郎は、紆余曲折の末に仲間とバンドを結成する。しかしなかなか売れず、結局バンドは空中分解。おまけに女性関係や家族との間にもトラブル頻出――八方ふさがりの圭次郎に未来はあるのか⁉ 1980年代から2000年代にかけての懐かしのヒット曲もふんだんに盛り込まれ、ビートたけしをはじめとする実在の人物も出てくる、サブカル青春漂流記。

公式サイト

マキタスポーツ

芸人・ミュージシャン・文筆家・俳優

1970年1月25日生まれ。山梨県出身。“音楽”と“笑い”を融合させた「オトネタ」を提唱。各地で精力的にライブ活動を行う。独自の視点でのコラム・評論などの執筆活動も多く、著作には『越境芸人』『一億総ツッコミ時代』『すべてのJ-POPはパクリである』『バカともつき合って』『アナーキーインザ子供かわいい』などがある。俳優としては2012年に公開された山下敦弘監督作品『苦役列車』をきっかけに、第55回ブルーリボン賞新人賞、第22回東スポ映画大賞新人賞を受賞。

Photographer::Masahiko Matsuzawa,Interviewer:Mamoru Onoda