昔の自分を助けてあげたいみたいな感覚で演じた
――『頭痛が痛い』の脚本を読んだときは、どんな印象を受けましたか?
阿部 脚本を読んだのは2018年の12月だったんですが、当時の自分自身にすごく重なる部分が多くて、共感する部分が多いなというのが第一印象でした。私が演じたいくは、自分自身を「こうでなくちゃいけない」という形に縛ってしまって、それが自分の首を絞める結果となって「いいえ」と断ることができないんです。本音を言えないまま、どんどん自分を追い詰めていってしまうところが、私に近いなと思いました。
せとら 私も、昔の自分と重なる部分が鳴海にはありました。自分を苦しめる方向にいってしまうというか、罪悪感を解消しようとして正解じゃないことをしてしまって、空回りをし続けて。阿部さんの言葉と被りますけど、どんどん首を絞めてしまって。そういうところは自分の性格と近い部分がありました。だから昔の自分を助けてあげたい、みたいな感覚で演じたところもありましたね。
――『頭痛が痛い』は守田悠人監督の初監督作品でもあります。監督の演出はいかがでしたか?
阿部 あんまり細かい演出はなくて、事前に「後半部分で逃避行するシーンは演出をつける」と仰っていたんですけど、そこまで「こうしてください」「こういう感情です」という指示はなかったですね。
せとら 私もそこまで細かい指示はなくて、たとえばお箸の持ち方だったり、雑多な感じは私がやってみたままでいこうと委ねてくれました。
――お二人の演技はとても自然でしたが、演者に委ねる監督の演出法も大きかったんでしょうね。
阿部 そのままを生かしてくださったように思います。
――お二人とも映画は初出演だったそうですがプレッシャーはなかったですか?
せとら プレッシャーを感じる間もなく、当時はがむしゃらにやっていました。むしろ『頭痛が痛い』がPFFアワード2020で審査員特別賞を受賞してからのほうが、「自分はちゃんとした人間じゃないから、(賞を受賞した映画の出演者らしく)ちゃんとしなきゃ!」というプレッシャーがあります(笑)。
阿部 私は映像作品自体が初めてだったので、右も左も分からない状態で、常にベストを尽くし続けるしかない!という気持ちで、プレッシャーというよりも必死でした。
――映画は陰鬱なシーンの連続ですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
阿部 現場のスタッフさんも含めてオープンにコミュニケーションを取っていこうみたいなタイプの方が少ない現場だったんです(笑)。
せとら どちらかというと陰寄りな……(笑)。だからこそ、やりやすい部分もありました。
阿部 撮影が順撮りだったので、私とせとらさんの距離感も映画通りで良かったんですよね。最初は距離感があってちょうどよく、撮影が進むにつれて、どんどん仲良くなっていって。本番以外でもちょっとずつ話せるようになっていきました。
せとら 最後のほうはスタッフさんも含めて現場は和気あいあいとしていましたね。