都市伝説はリアルな世界観だからこそ怖さを感じる

――最初に『きさらぎ駅』の脚本を読んだときの感想を伺えますでしょうか。

本田 人の裏の顔がすごく出ていて、追い込まれたときに人はどういう判断をして自分を守るのか、相手を守るのか、そういうことが描かれていると思いました。人との絆が描かれているので、これは観た人が「この映画、怖かった~」というだけではない、別の感想を持つんじゃないかなと思います。

――「きさらぎ駅」という都市伝説はご存じでしたか?

本田 最近知りました。本当にあった話だけど、実際にそれを見た人はいなくて、だけど現実世界と同じ世界で起こった訳で。すごく複雑ですよね。

――出演が決まって、ネットで「きさらぎ駅」について調べたりはされましたか?

本田 調べました。とてもリアルで、本当にあったことなんじゃないかと思いました。リアルな世界観だからこそ怖さを感じましたし、演技もリアルに表現するのがいいのかなと。

――本田さんご自身は、ホラー映画はお好きですか?

本田 映画自体が大好きなので、ホラーに限らずいろいろなジャンルを観ます。最近観たホラーで怖かったのは、『エスター』ですね。ホラーというよりサスペンスかもしれないですけど、エスターを演じる女優さんの演技がすごかったです。

――今回本田さんが演じる宮崎明日香は、きさらぎ駅に辿り着いてしまう乗客の一人です。監督と役柄について何かお話されましたか?

本田 役に関しては、私が作っていったものをそのまま監督が採用してくださいました。永江(二朗)監督の作品も以前から拝見していたんですけど、私はホラー映画に出るのが初めてだったのもあって、観るのと出るのではこんなに違うのかと思いました。ホラーがというより、今回が特殊だったんだと思います。

――どういった部分が?

本田 私たちがお芝居をして「よし、手応えOK!」じゃないんです。芝居はちゃんとできて当たり前で、そこからカメラワークに合わせて行く過程が重要でした。お芝居はそれぞれのキャストさんが事前に完璧に頭に入れて体に馴染ませておいて、リハーサルではひたすらカメラマンさんと息を合わせる練習という感じです。監督からもお芝居の演出というよりは、動きや間の取り方などについて細かく指示をしていだだきました。

――ホラー特有の演出はいかがでしたか?

本田 難しかったです。最初に監督にお会いしたときにも「リアルで自然な演技を追求していると、今回の映画は難しい」と言われました。いつもは自然な演技をしなきゃいけないので、何かを見て驚くときも、すぐにパッと驚くのが普通ですよね。でも今回は、何かが起こったときにまずカメラがそちらを向いて、カメラが自分に戻ってきたときに叫んだりしなきゃならない。演じる側からすると、驚いてから叫ぶまでに謎の「間」があるんです。

――その間の取り方によって怖くなるんですね。

本田 そうなんです!まず叫び声があってから恐怖の原因にカメラが行くと、お客さんは「何が起こったの?あ~、そういうことか」という感じです。でも「間」で何が起こったかを先に見せることで、登場人物とお客さんが同じ流れで驚くことができます。監督はホラーのことを知り尽くしていて、何が起こったのかをお客さんが理解したときに音を鳴らすとか、「ホラーってこうやって作るんだ」と、初めて知ることばかりで、たくさん勉強させていただきました。

――監督に説明を受けて、スムーズに演技はできましたか?

本田 やっぱり、すぐに驚きたくなりました(笑)。リハーサルも初めのうちは、そこを耐えるのが難しかったです。でも監督たちが一度現場に行って、スタッフさんたちだけで動きを再現した映像を初めに見せてくださったんです。

――ビデオコンテのようなものを作っていただいたんですね。

本田 はい。「これが望結ちゃんで、これが恒松さんで」と、代わりの人が演じた映像を見て、自分たちの動きを理解していきました。