自分の家族について初めて向き合ってみようと思った

――デビュー25周年記念として「かぞくのうた(feat.Hiroko Sebu)」をCDリリースされたきっかけを聞かせてください。

坂本 原曲の「かぞくのうた」は5年前に配信のみでリリースしていたんですが、ずっとCDで作品にしたほうがいいんじゃないかなとは思っていたんです。今回アレンジを担当してくれた友人でもある世武裕子さんがこの曲を気に入ってくださっていたんですよ。ここ数年、二人でライブをやったときも一緒にこの曲を演奏していて、その感触がとてもよかったんです。25周年を機に作品を出そうと思ったとき、世武さんは映画音楽をたくさん手がけてらっしゃる方なので、この曲を改めてアレンジしていただいたらどんなものになるんだろうと思ってお願いしました。

――歌詞は、家族をテーマに書かれたんですよね。

坂本 はい。もともとはCM用の曲で、最初から家族というテーマがあったんです。そのとき、自分の家族について初めて向き合ってみようと思って、ちょっと勇気を出した1曲でした。その頃、30代後半で、自分自身も親の病気があったり、周りの人たちも、親御さんの介護やお見送りと向き合い始めた年代で。そういう中で、世の中にはいろんな親子の形があるな、どんなに仲がよく見える親子でもいろんなことがあるなっていうのを実感したんです。

――年齢を重ねることで、家族の関係の見え方が変わってきたりしますよね。

坂本 そういう感じでした。どんなに立派で優しそうなお母さんでも不完全なところがあったり、それが子育てに出て受け継がれてしまったり。そういうのを見ていて、良し悪しではなく、みんないろいろあるなって思ったんです。もちろん、本当に心が通じた状態で一緒に過ごして、いつかはお別れをすることができたらそれは理想的だけれども、もしそうじゃなかったとしても、一緒にいるときは優しく過ごしたいし、穏やかに過ごしたい。ただ、できるだけ理解をしたいけれども、違う人間同士だからどうしても理解できないこともある。諦めではなく、違う人間なんだというのを改めて認めるという曲になりました。

――親子とは言え、それぞれが違う人間であることを改めて認識して向き合っていこうという歌であると。

坂本 そうです。それは、母がまだ健在で、娘も生まれてという状況になったからこそ実感できたことかもしれないです。また、自分への戒めでもあったりするんです。別々の人間だからコントロールしちゃいけないし、愛し方もそれぞれ。お互いを尊重しなくちゃいけない。ついついいろんなことを無理強いしたくなるけど、そうじゃないなって。別々の人だよっていうのは、きっと永遠のテーマとして抱えていくと思うので、そういったことを少ない言葉で書いていきました。