絶対的な安定はないから、そこでどう柔軟に生きていくかが大事

――話が飛びますが、坂本さんはBTSがお好きだそうで。

坂本 大好きです。ARMY(※BTSのファンネーム)です(笑)。

――何がきっかけでハマったんですか?

坂本 コロナ禍で夫が密かな楽しみとして仕事しながら聴いていたらしいんです。今思うと、そんな大事なことをなんで1年も黙っていたんだという感じなんですけど(笑)。そしたら、いつの間にかうちの娘が口ずさんでいました。私は娘から教わって映像を観ていくうちに、いつの間にかハマりました(笑)。

――BTSのどんな部分に惹かれたんですか?

坂本 曲も素晴らしいし、メンバーそれぞれ愛しいし、関係性も美しい。個々が、善く生きたいという善良な気持ちを持っていて、それが人を動かし、世界に伝染している。そしてやっぱりARMYが好きですね。世界中を見渡しても他にないファンダムで、人の幸せが自分の幸せっていうような、そんな理想、ある訳ないじゃん!と思うようなことが本当に起こせる人たちなんです。

――アメリカでのブレイクも、ファンのARMYの力で扉を開いた訳ですしね。

坂本 そうなんです。これが広がれば世界平和じゃん!と思えるんです。本当にBTSに出会えてよかったです。私はとても幸せです。ぜひここは書いてください(笑)。

――分かりました(笑)。では、坂本さんが25年の活動してきた中で、自分が得た大きなものはなんだと思いますか?

坂本 今まで私は、周年を祝うというのを1回もやったことがなかったんです。それは、自分自身が今まで、大きなことを成し遂げた、という気がしていなかったというのもありました。でも25年は四半世紀じゃないですか。私はそんなに自己肯定できるタイプではないんですが、長くやってきたね、辞めなくてよかったねと、自分を褒めてあげようと思いました。あと3年前にデビューから所属していた事務所を独立して、今のマネージャーとフリーランス同士で活動しているんです。独立したことで、自分の意志で音楽をやっているというのがより出てきました。自分の意志で何かをやりたいと思ったときに支えてくれる人がいるというのが、とても心強いんです。そうした仲間が増えてきて、ファミリーというか、支えてくれるチーム感をすごく感じています。だからこそ、25周年を銘打ってみんなで何かやろうって気持ちになれたんだと思います。

――信頼できる仲間と出会えたことが大きかったと。

坂本 それまで、みんなで何か一緒にやろうという感覚を、私は知らなかったんです。前は、自分で何か成し遂げて認められなくちゃいけないって思いこんでいたんですよね。でも、そういう強迫観念みたいな感じじゃなくていいんだと思えるようになってきたんです。「長く続くってことだけで偉いよ」「そのままで素晴らしいよ」とみんなに言ってもらえている気持ちになれるというか、音楽家としても、ひとりの人間としても肯定されてる感じがすごくします。そしたら音楽だけじゃなく、子育てのことや、猫が好きなこと、BTS が好きなこと、私を構成する要素が絡まり合ってちゃんと円になるようになっていったんですよね。仕事とプライベートの境目もあやふやになって、いい溶け合いをしていると思います。

――最後に進路を検討しているティーンに向けてメッセージをいただけますか。

坂本 今って“好きなことを見つけてそれに向かってどんどん行きなよ”って簡単に言ってあげられない、そんな単純じゃない社会じゃないですか。だからなかなか難しいですけど、大事なのは、どうやっても絶対的な安定はないから、そこでどう柔軟に生きていくかってことだと思っているんです。たとえば自分がどう過ごしていても、地震や災害が起きたり。

――何が起きるか分からないですよね。

坂本 だから安定しないという前提で、どう自分を守って、愛する人と一緒にいられるかという生き方を探ってほしいと思うんです。柔軟さやいざというときに飛び込める勇気も必要だし、心を開いておくことも大事。常に動けるようにして、体に負担をかけないでやるみたいなイメージかな。

――気持ちの柔軟性と行動力が大事であると。

坂本 とはいえ、優先順位はやっぱり自分の魂が喜ぶことだと思います。無理をしないで、ほんとにそれがやりたいのかどうか。でも、やるなら好きなことだけでいいと思う。なんか明確な助言ができなくて申し訳ないけど、娘にどんな力を持っていてほしいかな?と思うと、出てくるのはそういうことですね。とにかく、自分の力でどうにもできない不可抗力が多すぎるから、予定通り行かなくてもそれで絶望しなくていいよってことですかね。みんなでサバイブしましょう。

Information

『かぞくのうた』
好評発売中!

CD シングル+LIVE DVD
¥3,500(tax in)

【CD収録曲】
「かぞくのうた(feat.Hiroko Sebu)」
「あなたと」

【DVD】
2021年12月26 日(日)金沢21世紀美術館シアター21で開催された『Memories of Shelter 坂本美雨 feat. 平井真美子』ライブの模様を収録

1. birds fly
2. shining girl
3. story
4. gantan(birth)
5. hoshi no sumika
6. for IO
7. かぞくのうた
8. あなたと
9. 星めぐりの歌
10. 遠い町で
11. ダニー・ボーイ

公式サイト

坂本美雨

アーティスト

1980 年 5 月 1 日生まれ。1997 年「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌手デビュー。音楽活動にとどまらず、ナレーション、執筆、演劇など表現の幅を広げ、2011 年から TOKYO FM/JFN38 局、全国ネットの「ディアフレンズ」でパーソナリティを担当。2006 年に結成した「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」としても、全国各地でライブをおこなっている。2021 年、ソロ名義としては約 6 年半ぶりとなるアルバム『birds fly』をリリース。アニバーサリーイヤーの今年、25 周年ツアーを開催中。

Photographer:Yuta Kono,Interviewer:Keisuke Tsuchiya