ドリフト練習の最中に土屋圭市の車をぶつけてしまう
――ドリフトを題材にした『ALIVEHOON アライブフーン』は、現役時代に“ドリフトキング”と呼ばれた元レーシングドライバーの土屋圭市さんが監修を務める本格派のカーレース映画です。もともとドリフトの存在はご存知でしたか?
福山 言葉は知っていたんですけど、それがどういう競技で、どんなスポーツなのかは分からなくて、この映画の出演が決まって一から勉強しました。撮影に入る前に、実際にレースを観に行ったんですが、速度、音、臨場感といったものの迫力に一瞬で心を掴まれました。「これから撮影が楽しみだな」って、すごくワクワクしたのを覚えています。
――eスポーツ日本一の大羽紘一(野村周平)が、ドリフトレーサーとしても頂点を目指すというストーリーも斬新です。
福山 eスポーツは世界中で盛んで、僕もYouTubeで観ることもあるので、バーチャルとリアルの融合を日本の映画でやるというところも楽しみでした。
――福山さんが演じる柴崎快は当初、ゲーマーの大羽を見下し、実際のレースでも罠を仕掛けるなどヒール的なキャラクターですが、役作りではどんなことを意識しましたか?
福山 監督が仰っていたのは、「ヒールな役ではあるけれど、ヒールというものを前提に役を作らないでくれ」ということ。柴崎という男は純粋にドリフトというスポーツを愛しているからこそ、勝つためなら手段を選ばないのであって、根はピュアなんです。誰かを蹴落としたいという思いが先行するのではなくて、勝つためには何でもやるぞというような解釈で役を作っていきました。
――車内という狭小な空間での演技はいかがでしたか?
福山 ヘルメットを被っていて目だけしか見えないので、目での演技が重要になります。野村君の撮影が先にあったので、どういう風に映っているのか覗かせてもらったんですが、彼は純粋に車と向き合っている目をしていたんです。柴崎は大羽よりも先にドリフトの世界に入っているので、あまり瞬きをせずに圧を出すというか、監督ともお話しながら執念みたいなものを目で表現できるように意識しました。
――レーサー役の俳優さんは全員、助手席に同乗して、プロのドリフトを体験したそうですね。
福山 そうなんです!ドリフトって滑らせるときに、タイヤから煙が物凄く出てくるから、車内も真っ白になっちゃうんですよ。撮影が終わって映像を確認したら、もくもくになり過ぎて肝心な絵が映っていなかったりして(笑)。そういうこともありましたけど、なかなかできない経験なので楽しさが一番でした。
――土屋さんから直接、指導はあったんですか?
福山 作品に入る前に野村君と僕と二人で、土屋さんにドリフト練習をしていただきました。土屋さんご自身の車に乗って、野村君と交互に練習させてもらったんですが、僕ぶつけちゃったんですよ……。頭の中が真っ白になりましたね。事故る瞬間ってスローになるとか言うじゃないですか。実際なりました。「ああ、やってしまった」と思いながら破損していないか確認して、遠くにいた土屋さんを見たら大きい丸のサインを出してくれて「なんて懐の深い方なんだろう」と。とにかく土屋さんはかっこよかったです。