人生は若いときに確立された自分に経験を付け足していく作業
――Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」では高校時代からバンドに打ち込む中澤悠斗役を演じています。上杉さんはヒップホップクルー「KANDYTOWN」で音楽活動も行っています。バンドとヒップホップクルーという違いはありますが、中澤と共通する部分もあったのではないでしょうか。
上杉 中澤は高校からの仲間ですけど、僕も小中からずっと一緒の仲間とやっているので、「昔からの仲間と夢を見て」という点では近いものがあるかもしれないですね。
――ベースを弾きながら歌う姿が様になっていました。
上杉 いやいや……バンドの経験はないので、最初はベース兼ヴォーカルというのは抵抗がありましたし大変でした(笑)。
――燃え殻さんが手がけた脚本を初めて読んだとき、どのように感じました?
上杉 登場人物の年齢が今の自分と近いというのもあって、ポイントポイントで刺さる部分がたくさんありました。燃え殻さんは細かい描写をされる方で、それをうまく脚本に昇華されているなと感じて、文字だけでも絵が浮かぶというか。監督の萩原さんとは以前、『サヨナラまでの30分』という映画でお仕事をしたことがあるので、すごくきれいな絵の繊細な作品になるだろうなと思いながら脚本を読みました。
――Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」の第1話では、高校の教室で臨時の英語教師(田中麗奈)が、過去のグラビア写真を生徒たちによって晒される衝撃的なシーンがあります。生徒たちは様々な反応を示しますが、どちらかというと中澤はクールな対応をします。
上杉 ある意味、大人なのかな。中澤は仲間たちと組んだバンドで、武道館公演という目標を持って、こうなりたいというイメージが明確で、それを高校生の時点で見つけられたのはすごいこと。そうなると他のことは気にならないだろうし、周りが子どもに見えてくると思うんです。だからこそ他の生徒たちとは一線を引いたところにいられたのかなと思います。
――中澤を主人公に据えたエピソードは2話あります。第4話は中澤が高校の同級生と武道館公演を目指すところから、27歳で仲間たちとのラストライブを迎える日まで。第7話では実家のラーメン屋を継いだ中澤が30歳を迎えて、ある奇跡が起こるまでが描かれています。
上杉 ラストライブからラーメン屋になるまで3年間の時が流れていますが、僕自身に当てはめて、この2、3年で何が変わったのか考えてみたら、大きく変わってないんですよ。人生って、このドラマの始まりである17歳や、20歳のときに確立された自分に経験を付け足していく作業だから、主軸は変わっていなくて。そんなに変わることってないよなというのと、持っていた夢は叶わなかったけれど、夢は何個あってもいいと思うし、中澤はバンドの夢が破れてラーメン屋になるけど、そこが落ち着いた場所だとも思っていない。中澤なりに希望はあるだろうし、ラーメン屋でいることに対してもネガティブに思っていないんですよね。だから中澤を演じる上で、ちょっと違うベクトルの希望の持ち方みたいなものをイメージしていました。