最新曲『優しすぎる君が嫌い』に残る18歳の思い出。初心に帰れるデビュー曲『歌って』
――2022年4月にリリースした最新楽曲『優しすぎる君が嫌い』は、明るい曲調ながらも歌詞からは切なさを感じられる1曲です。18歳のとき、人生で初めて作った曲だと伺いましたが、どんな思いでこの曲を作ったのでしょうか?
松本千夏(以下、松本) きっかけは、高校卒業後に通っていた音楽系の専門学校の授業でした。曲を作る課題があり、先生に「経験がないから作れないです」と相談したときに「今の千夏ちゃんが感じていること、思っていることを作文のように書いてきて」と言われて。その先生が、今もお世話になっているルンヒャンさん(シンガーソングライター)で、作文は得意だったので、ノートの4ページ分にモヤモヤした気持ちや、当時の自分が気になっていることをたくさん書いた中に「優しすぎる君が嫌い」というフレーズがあったんです。
――ルンヒャンさんはどのようなリアクションでしたか?
松本 後日、学校へ持って行ったらルンヒャンさんに「この“優しすぎる君が嫌い”のフレーズ、めっちゃいい。ここから広げていこう」と褒めてもらえて、そこから曲を仕上げていきました。実は当時のモヤモヤというのは、好きな人への思いだったんです。相手の優しいところが好きだけど、優しすぎて嫌いになりそうな気持ちがあって。ケンカして自分が怒っていても「ゴメンね。オレが悪かったわ、ゴメン」と繰り返すばかりで終わってしまい、一緒にいるためにそれ以上の話がしたかったのに、優しすぎるなって。そんな時に生まれたやりきれない気持ちを曲にのせました。
――歌詞には、当時の思い出が詰まっていたんですね。初めての作曲は、どのように進めていったんですか?
松本 ギターの簡単なコードだけは覚えていたので、ずっとループして繰り返していきました。でも、初めは大変で。何度弾いても、全然いい曲ができなかったんです。しばらくはサビだけ弾き続けて、ようやく出てきたのが「優しすぎる君が嫌い~♪」という歌い出しのメロディでした。
――デビュー曲『歌って』から最新曲まで、自分の作品に一貫して込めている思いはありますか?
松本 一貫しているかと言われると難しいんですけど、歌詞は、できるだけ素直に、嘘がないように書こうと思っています。自分の気持ちとかを、みなさんに伝わるように分かりやすい言葉でまとめようと心がけていて。あとは、リアルかな。恥ずかしさも捨てて、感じたことを分かりやすく素直に表現した方が、みなさんに響くだろうと考えています。
――だからこそ、共感を呼びやすいのかもしれませんね。普段はどんな状況で曲を作っているんでしょうか?
松本 だいたい自宅です。やっぱり、自宅だと色々なことが頭をよぎるんです。「あの言葉引っかかったな」とか、「このとき、こう言えばよかったな」とか。夜、1人でいるとネガティブな気持ちになったりするんですけど、そういうときの方が書けたりもします。日常的に、気になったことはスマホのメモに箇条書きしていて、そこから言葉を引っ張ってくるときもあります。映画を見た感想とか、誰かが言っていて気になった言葉をメモで見返すと「そんな捉え方もあるんだ」と発見もあるので面白いです。
――そうして作られた曲をライブで披露する時に意識していることはありますか?
松本 コロナ禍もあってステージで歌う機会はまだそう多くないんですけど、路上ライブなどでは、見てくださっている全員の方に「届け!」と素直に思っています。歌詞は一言一句、分かりやすく、聞き取ってもらえるようにしています。言葉が伝わらないと意味がないと思っているので、歌い方のテクニックよりも、声の出し方に気を遣っています。
――これまでリリースした楽曲の中で、青春時代を生きるティーンに聴いてほしい曲も教えてください。
松本 デビュー曲の『歌って』です。10代の頃、自分のやりたいことと周囲の意見が一致しなくて、本当は頑固に突き進むタイプにも関わらず、「どうしようかな、自分」と考えながら迷っていた時期に作った曲です。路上ライブでは「やっぱり自分にはこの道しかない」と思いながら歌っていたのも、よく覚えています。私自身に進むきっかけを与えてくれた曲なので、ぜひ聴いてほしいです。今も、この曲を歌うと初心を取り戻せます。