売れて“変わる”人の方が人間らしくて好き

――この映画の情報が発表になった際、監督の「かわいい映画になりました」というコメントがありました。前作『空白』(2021)はとても辛いシーンが多い作品でしたが、「次は明るい作品を」といった気持ちがあったのでしょうか。

𠮷田 『空白』も撮影は案外楽しいんです。スタッフもキャストもいて、撮影後にはご飯を食べに行ったり、飲みに行ったり。脚本を書いている時間がキツイ。子どもが死んだとか、そういう描写を一人でずっと書いていると精神的にも滅入ってくるから、ちょっとふざけたものを書きたくなってくる。だから『神は見返りを求める』は書いていて楽しかった。

――本作はポップなテイストでありながら、𠮷田作品らしい皮肉さも描かれていました。

𠮷田 俺の意地悪な部分は、「意地悪だな」って受け取ってもらえると思うけど、『空白』の様な作品で意地悪を出したら人間性を疑われると思うからさ、あんまり悪乗りは出来ない。なので、すごく気を遣いながら(脚本を)書いたけど、この映画ではやりたいものをそのまま書いた。

――“あるある”じゃないですけど、ゆりちゃんのチャンネルがバズって、人気YouTuberとなり、服装がガラッと変わる感じとか、すごく面白かったです。

𠮷田 俺はそういう人好きなんだよね。売れてめっちゃお金持っているのに、全然変わらず謙虚な人ってつまんない。有名な野球選手と甲子園に一緒に行った人が、「彼はプロに入って何億も稼いでいるのに、久しぶりに会っても全く変わらなかった」っていう話、俺にとっては全然面白くないですよ。「必要のない時計やアクセサリーをジャラジャラつけはじめたんだよ」って話が聞きたい(笑)。環境で自分まで変わっちゃう人っていうのは、人間らしくて微笑ましい。「人間って面白いな」って。

――その方が素直で人間らしいというか。

𠮷田 そうそう。それを「あいつは変わった」とか嫌悪感を煽るのは、もう嫉妬じゃん。その嫉妬している人の方が気持ち悪い可能性あるよね。例えば、成功してすごくオシャレになった人がいたら、「その服教えて」とかって言えばいいじゃん。「なんか変わっちゃったよね…」とかヒソヒソ言っているやつの方が気持ち悪いだろって俺は思います。認めてあげればいいじゃん。成功したんだから。だけど世の中はそうじゃないからね。日本人って「いつまでも謙虚でいること」が求められるから大変ですよね。

――本作で、田母神を演じるムロツヨシさんも素晴らしい演技を見せていますね。

𠮷田 若い方たちは、福田雄一さんの作品で観る様な、明るくて楽しいムロさんのイメージが強いと思うのですが、本当に奥深い役者さんなんですよね。そこら辺でまた見方、印象が変わってくれたら嬉しいです。

――ティーンにとっては「理想のお父さん」や「理想の上司」に選ばれているムロさんですが、色々な表情を見せてくださりますよね。

𠮷田 この映画を観て、「理想のお父さん1位」から「家の前にいたら嫌な人1位」になってほしいです(笑)。

――(笑)。本作のどんな部分をティーンに楽しんでもらいたいですか?

𠮷田 とにかく観て感想を教えて欲しいですね。今の10代の子ってセンスあると思うんで、俺らの時代と映画の見方もまた違うだろうから。俺が10代の時よりも、もっといいセンスの感想を書けそうな気がするので楽しみですね。俺の他の映画のレビューを見ていても、真面目なおじさんが書いてくれたしっかりとしたレビューだなあと思ってたら「僕の学校でも…」と続いて、「このレビュー学生なんだ!」って驚いたことも。