「憧れと自分は違う」と気付けたことが転機に

――今ではたくさんのファンの方がいらして、日本を代表する映画監督として活躍されています。

𠮷田 だから「お前の独特の変な感じをそのまま映画にした方が良い」と、言ってくれた人には感謝しています。映画のプロデューサーだったのだけど、自分でデザインした物凄く禍々しい年賀状を送って。正月に見たくないような嫌がらせの様なイラストの年賀状を。それを「このセンスみたいなものを映画にした方が良いよ。普通じゃないから」って。そんな言葉が結局は今につながっているので、面白い。

――自分だけのセンスを見つけるって難しいけれど、素晴らしいことですよね。

𠮷田 映画は昔からいっぱい見ていて、10代の頃は「日本映画ってダセー」って思っていたの。何でハリウッドやヨーロッパの映画とこんなに違うんだろうって。そんな時に、塚本晋也監督の映画というよりは、ミュージックビデオに近いぐらいの、ハイセンスな作品を観た時に、「世界一カッコいいじゃん」と思って。それで塚本監督みたいな映画を作ろうと、自主映画でやったらめちゃくちゃ偽物の作品が出来上がって、それをやった結果「あ、こういう人を真似してもダメなんだ」っていうのが分かった。じゃあ、俺に出来ることはなんだろう?と。憧れと自分は違うっていうことを、割と早くに気付けたのはすごい助かったんですよね。

――「憧れと自分は違う」というのはどの職業にも当てはまりそうな言葉です。

𠮷田 10代の時は自分が何を好きかを胸を張って言うのが恐かった。映画でもマンガでも好きな女の子のタイプでも、自分だけ少数派だったときにちょっと恥ずかしいなと思っちゃうことがあって。だから、27歳くらいまでは「カンヌでグランプリとった映画すごく良かったよね」とか言われて、自分は全然分かんないのに話を合わせちゃっていたの。でも、そういう時に自分の意見を言えないと自分が何を好きなのか分からなくなる。カッコつけていたんだよね。周りにダセーって言われないよう意識しようと思っちゃった。でもそれが足を引っ張っていたんですよ。若い子がこれから就職しようとか、自分のやりたいことを見つけるときに、「自分が何を好き」なのかを人の目を気にせずに、自分で理解する能力をまずつけないと。俺はそれで相当変わりました。自分が何を好きなのかが分かると、色々な選択が出来る様になるから。

Information

『神は見返りを求める』

ムロツヨシ 岸井ゆきの
若葉竜也 吉村界人 淡梨 栁俊太郎
田村健太郎 中山求一郎 廣瀬祐樹 下川恭平 前原滉
監督・脚本:𠮷田恵輔
主題歌:空白ごっこ「サンクチュアリ」 挿入歌:空白ごっこ「かみさま」(ポニーキャニオン) 音楽:佐藤望
企画:石田雄治 プロデューサー:柴原祐一 花田聖
配給:パルコ 宣伝:FINOR 制作プロダクション:ダブ   ©2022「神は見返りを求める」製作委員会

公式サイト

公式Twitter

𠮷田恵輔

監督

1975年5月5日生まれ、埼玉県出身。 東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作する傍ら、塚本晋也監督の作品の照明を担当。2006年に自らの監督で『なま夏』を自主制作し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリを受賞。2008年には小説「純喫茶磯辺」を発表し、同年、自らの監督で映画化して話題を集める。近年の主な作品は、『ヒメアノ~ル』(16)、『犬猿』(18)、『愛しのアイリーン』(18)等がある。昨年公開された『BLUE/ブルー』『空白』では、第34回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞にて監督賞を受賞し、また『空白』は、第76回毎日映画コンクール・脚本賞、第43回ヨコハマ映画祭では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞と4冠に輝いた。

Photographer:Tomohiro Inazawa,Interviewer::Kozue Nakamura