面白がっているものが小さい頃から変わっていない
――お笑い芸人で漫画家のたなかさんが、どうして絵本を執筆するようになったのでしょうか?
たなか まず漫画家になった理由ですが、お笑いをやっているのに、人前が苦手という致命的な欠陥を持っていまして(笑)。お笑いを絵で表現しようとギャグ漫画を描き始めました。ただ、僕がやってきたお笑いというのは、ギャグ漫画も漫才もコントも含めてですが、なかなか日本から出られないなと。日本には偉大なギャグ漫画家さんがたくさんいらっしゃいますが、なかなか海外では受け入れられない。
――海外で人気のある漫画はたくさんありますけど、純粋なギャグ漫画は聞かないですよね。
たなか 『ドラゴンボール』や『NARUTO -ナルト-』などになりますよね。お笑いの文化が違うからしょうがないんですけど、そこに苛立ちみたいなものを感じて生きてきた中で、たとえばダリみたいな芸術家の作品を見ていると、自分の中で大喜利の解答として面白いんじゃないかという発想があったんです。漫才やコントのように、そのままお笑いとして出すのではなくて、その発想をお笑いじゃない入れ物に入れたいなという気持ちをずっと持っていたんですよね。そんな中、僕は幼少期から絵本がいっぱい転がっている家で育ったので、「絵本を描きたいな」という気持ちがあったんです。
――お笑いの要素を盛り込んだ絵本も多いですからね。
たなか そしたらお笑いのほうで交流のあった制作会社で仲良くしていた方が、親戚に絵本で有名なポプラ社の編集さんがいると。その編集さんを紹介していただいたときに、「絵本に興味あります?」「むっちゃあります!」というやり取りがあって、そこからスタートして、約2年かけて描いたのが1冊目の絵本『ぱんつさん』です。そこからさらにまた2年ぐらいかけて描いたのが2月に出した『ねこいる!』です。
――絵本を描くうえで、子どもの視点に立つことも大切ですよね。
たなか そもそも僕の面白がっているものが、小さい頃から変わってなかったりするので、幼稚な発想に大人の技術を加えるみたいなのが好きなんです。いわば「あるある」の逆の「ないない」を作り続けているんですよ。子どもって常識に縛られずに、「ありえへんやろ」みたいな絵も描くじゃないですか。そんな部分に対する憧れと言ったらおかしいですけど、そういう気持ちは常に持っとかんとなと思っていて、子どもの発想のまま、小難しい説明は一切なしで、シンプルなアイデアをババーン!と出すスタイルなので、子どもがキャッキャ言ったり、びっくりしたりしてくれたらいいなという気持ちを込めながら絵本を作っています。