新たなアプローチで曲の理解度、解像度が上がった
――2ndアルバム『ユーリカ』のコンセプトを聞かせてください。
ヨシダ 1年3ヶ月ぶりのフルアルバムでsajiとしては2作目になります。星と宇宙をテーマに書いた曲がメインになっているんですが、アルバムタイトルの『ユーリカ』はギリシャ語の感嘆詞で「見つけた!」という意味なんです。バンドを最初に組んで1曲目ができたとき、すごくうれしかったんです。この1曲が僕らの世界を変えてくれるかもしれない、この1曲で人生が変わるかもって感動がありました。ただ、長く活動していくとどうしてもその感覚が薄れてしまう。今、sajiとして3年ちょっと経ったタイミングで、僕らにとってのユーリカ、発見、初期衝動みたいなものを思い出してやりたいという思いを込めてこのタイトルをつけました。
――前作とはどんな変化がありますか?
ヨシダ 前作『populars popless』はライブのセットリストのようなアルバムというコンセプトだったんです。リリース時期がコロナ禍で混迷している状態で、僕らもツアーが中止になったりライブができない状態でした。だったら、ライブに来てくれたような感覚で聴けるアルバムを作ろうってコンセプトで制作したんです。今回はエンタメの世界も活気を取り戻してきている中で、ようやく僕らも秋のツアーを公表できた。ならば前作とは違って、ライブで完成する作品にしたい。お客さんの目の前で歌って答え合わせができるような歌を紡ぎたいという思いからこのアルバムができたんです。ようやくバンドらしいというか、シンプルに自分たちがやりたい音楽を詰め込んだ作品を出すことができたという感じがしますね。まだ制限はありますが、これまでのライブが戻ったときに、みんなで掛け声を入れられるような「フォーマルハウト」だったり、ライブアンセムっぽい曲も入れられるようになりました。
――今回、演奏でこだわった部分は?
ヨシダ 曲にもよりますが、収録曲のうち5曲をボーカルから先にレコーディングをしたんです。普通レコーディングではリズム隊から録っていくんですけど、自分で作ったデモで、クリックで歌を録って、それを聴いてベース、ドラムも録るというやり方をしました。
――それは珍しいですね。
ヨシダ 意図していた訳じゃなかったんです。制作の工程的にレコーディングの順番がかみ合わなくて試しにボーカルから録ってみたら意外とよかったんですよ。ユタニとヤマザキは歌を聴きながら演奏できるので、新鮮なアプローチができたんじゃないかなと思ってます。
ヤマザキ 歌が最初に入っていたので、やっぱりテンションは上がりますよね。いつもと違う難しさは特になかったですし、楽しかったです。
ユタニ いつもは、歌が入ってないメロディだけのデモを聴きながらギターを弾くんですが、今回のように歌が入ってる方がレコーディングはやりやすかったですね。
――メンバー全員が歌詞の内容を把握してレコーディングできると、曲の説得力も上がりますよね。
ヨシダ そうですね。僕はソングライティングをやらせてもらっているので頭の中で物語は鳴ってますけど、2人はどんな曲なのか全容が見えないで録ることが多かったと思うんです。でも、曲のアプローチをちゃんと理解した上で、3人で臨めたので、やっぱり曲の理解度、解像度は絶対上がったと思いますね。