音楽業界の元気を取り戻すべくシャウトする打首獄門同好会

「E.YAZAWA SPECIAL EVENT ONE NIGHT SHOW 2022」は2019年に「ボーダーレスでアグレッシブなアーティストに出会ってほしい」という矢沢の想いから第1回が開催。第2回は翌年2020年に企画されていたが、新型コロナウイルスの影響を受けて延期に延期を重ね、今年ようやく開催に至ることとなった。

7月3日のDay2。午後4時、会場が暗転。開演を待ちわびる観客のざわついた空気を一変させるかのごとく、重厚なサウンドのイントロが流れる。一組目は生活密着型ラウドロックバンド「打首獄門同好会」。エッジの効いたギターリフとともに、ボーカルの大澤敦史が「それでは始めましょう!打首獄門同好会です、よろしく!」とシャウト。会場が一気に熱気に包まれ、「一夜限りの祭り」は幕を開けた。

1曲目は、新型コロナの影響によって受けたさまざまな打撃への悔しさを綴った「新型コロナウイルスが憎い」。2020年の無観客配信ライブのオープニングとして発表された同曲は、Twitter動画で100万回再生を記録し、話題を呼んだ。私たちの生きる今をストレートに歌い上げながら、演奏はハイスピードに2曲目へと移る。

冒頭から激しいシャウトが続く「きのこたけのこ戦争」は、某菓子商品の派閥争いを歌った生活密着型の打首らしいナンバー。3曲目は大澤が自身の主治医を招いて生み出されたという「歯痛くて」で、誰もが経験する虫歯の苦しみを叫んだ。楽曲ごとにバックスクリーンに映し出されるポップでシュールなMVと共に、ステージには打首独自の世界観が広がっていく。

大澤が「多くは語りません。今ご覧いただいたもので、どんなバンドなのかはお察しいただけたかと思います。こういうバンドをなぜ矢沢さんが呼んでくださったのか、今のところ我々も把握しておりませんが、大変光栄に思っております」とはにかむと、会場は大きな拍手に包まれた。

さらに大澤は、「高校時代、音楽の道に進みたいと心に決めていて、音楽の勉強がてら、コンサートスタッフのアルバイトをしていたんです。」と秘話を語り始める。そのとき、出演アーティストの情報は事前に知らされておらず、会場へ行ってみると「今日は矢沢さんです」と伝えられたのだという。設営作業中に、照明調整のため偶然ステージに立つよう指示されたときのことを振り返り、「それから20数年経った今、また同じように、この後、矢沢さんが立つステージに立っています。今日は20数年前とは事情が違い、矢沢さんに託されたバトンを持っています。そのトップバッターの役割をしっかりと果たしたいと思います」と決意を固くした。

続く4曲目は「なつのうた」で、35℃を記録したこの日にぴったりな緩急のあるナンバー。サビのキャッチ―なフレーズが脳内でループする「はたらきたくない」。様々な猫のシチュエーション動画を集めたMVが印象的な「猫の惑星」と畳みかけた後、大澤は「音楽業界は2年半ほど苦しい状態が続いています。我々も微力ながら、ツアーを通して音楽業界の元気を取り戻せるように、力になりたいと思います。」と宣言し、7曲目の「地味な生活」へ。痛快なミクスチャー・ロックに合わせて会場の一体感がさらに高まっていく。ラスト2曲は「島国DNA」「日本の米は世界一」と、日本の誇れる食材への賛歌で締めくくった。