親の発言や行動は自分を思ってくれているからこそ
――『心の詩~扉の向こうに』で映画初主演を果たしましたが、初めてお話を聞いたときは、どんなお気持ちでしたか?
矢倉 演技自体が久しぶりだったのでドキドキと緊張が入り交じった気持ちでした。もともとNMB48のオーディションを受けたのも、女優さんになりたかったという面があるので、演技のお仕事ができるのはうれしかったです。
――演技のお仕事は約1年ぶりだそうですね。
矢倉 そうなんです。「あ、こういう感じだったんだ」と思い出したというか。いつも台本のセリフは前日に覚えていたのですが、その感覚も久しぶりで、改めて演技は大変だなと思いながら取り組んでいました。
――脚本を読んだ印象はいかがでしたか?
矢倉 初めて読ませていただいたときは、自然と涙があふれ出てきました。プロデューサーさんが初顔合わせのときに、「脚本家の方に感動する話を書いてほしいと頼んだ」とおっしゃっていたんですが、その通り家族の愛が感じられる良いお話だなと思いました。
――矢倉さん演じる未来に共感する部分はありましたか?
矢倉 私は母子家庭で、お母さんが大好きだったので、あまり反抗することはありませんでした。今回演じた未来ちゃんは、「こんなにひどいことを言うの?」と思うくらい、お父さんに対しては冷たいんです。そのあたりは自分とのギャップを楽しみながら、違う自分になりきって演じました。ただ、お父さんに対して素直になれないところはすごく分かる気がします。家族だからこそ普段は恥ずかしいし、照れもあって、「ありがとう」とか「大好きだよ」とか言えないものですよね。
――未来を演じる上で工夫した点はありましたか?
矢倉 監督が自由に演じさせてくれる方だったので、自分の中で、「未来ちゃんはこう思うだろうな」と思い浮かべてやったところが多かったです。あと実際、私にも弟がいるので、弟とやり取りするシーンは日常を思い浮かべながら演じました。自分で想像しながら役作りをできたからこそ、未来ちゃんというキャラクターを作りやすかったのかなと思います。
――弟役の松本岳さんは、矢倉さんよりも年上ですよね。
矢倉 そうなんです。普段は良いお兄ちゃんという雰囲気なので、スタッフさんからも妹とお兄ちゃんと間違われてしまうくらい、役の設定とは逆転しているんです(笑)。だから本番以外では、「お兄さん」と呼んでいました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
矢倉 初日から最終日まで楽しく撮影させていただきました。共演者の皆さんも優しくて感謝の気持ちでいっぱいです。まだまだ演技に慣れていないので、勉強させてもらう毎日でした。最初はドキドキのほうが大きかったのですが、徐々に演技していて楽しいという気持ちのほうが大きくなりましたね。
――改めて久しぶりの演技はいかがでしたか?
矢倉 演技の仕事から離れていたので、演技に対する熱量のようなものは薄れているのかなと思っていましたが、実際やってみると楽しい気持ちが強かったので、またやりたいなと思いました。
――ティーンに向けて映画の見どころを教えてください。
矢倉 未来ちゃんは24歳ぐらいの設定ですが、お父さんに対する反抗期の最中という意味では、高校生に通じるものがあると思います。10代の男の子と女の子にしてみれば、親に暴言を吐いたり、きつく当たってしまったりすることは「分かるな」という部分もあると思います。ただ、親の発言や行動は、自分を思ってくれているからこそ、愛があるからこそだと気付かせてくれて、自分を見詰め直せる作品になっています。この映画を観て、家族に対する感謝の気持ちを言葉にしてみようと思ってもらえたらうれしいですね。
――矢倉さん自身、10代の頃よりも親に対して素直になれた部分はありますか?
矢倉 20歳を超えてからは、お母さんの誕生日や母の日など節目節目にプレゼントを贈ったり、LINEでありがとうと言ってみたりするなど、自分から積極的に感謝の気持ちを伝える機会が多くなりました。そういう部分では大人になったのかなと思います。